目次
序 章 モダン・アート
――モニュメントなのか、あざけりなのか
第1章 アヴァンギャルドをたどる
前衛の起源と立場
モダン・アートを売る
今日の前衛──死んでいるのか、生きているのか
第2章 モダンなメディア、モダンなメッセージ
絵画と装飾──その快楽と諸原理
メディアを混ぜる――コラージュからインスタレーションへ
芸術とオブジェのあわい
第3章 ピカソからポップな偶像へ
――芸術家の名声
誰かがピカソにならなければならなかった
女性芸術家たち──差異化された立場
ポップ・アイドルたち
第4章 現代の錬金術
――モダン・アートと消費主義
不純物から金へ
スペクタクルの社会
モダニズムの危機
第5章 ポストモダンを超えて
――その先にあるもの
新しいものの見方
差異の世界──西洋と非西洋
創造性の代価──デジタル時代の芸術
訳者あとがき
用語解説
文献案内
図版一覧
索引
前書きなど
二〇〇一年六月四日、レイチェル・ホワイトリードの彫刻作品《モニュメント》が、ロンドンのトラファルガー広場にある第四の台座〔何も乗っていない北西の角の台座〕の上に設置された。イギリスの新聞がその翌日に報じた反応は、完全に予想通りのものだった。この場所には、以前にも二人の芸術家(マーク・ウォリンガーとビル・ウッドロー)が作品を設置したことがあったが、それらと同じように、ホワイトリードの《モニュメント》――台座自体の型をとって透明な樹脂に鋳造し、逆さにして台座の上に置いたもの――もまた、ただちにもの笑いの種になったのである。『デイリー・メール』紙は「平凡」で「受け狙い」の「意味のない」ものとして非難し、『タイムズ』紙は人々が水槽や浴室のシャワー・ユニットに喩えて貶していたと報じた。文化業界の人々が作品を擁護するコメント――ただし漠然としていて自己保身的な発言――に触れる新聞もいくつかあった。当時の文化省大臣クリス・スミスと、テート・モダンの館長ラース・ニットヴ、そしてテートのプログラム・ディレクターを務めるサンディー・ネアーンは、《モニュメント》の飾り気のなさやコンセプトのわかりやすさが「美しく」、「知的」で「目もくらむほど素晴らしい」などと口々に褒め称えた。だが、彼らが非難に対して果敢に反論しようとすることはいっさいなかった。またホワイトリードの作品は、台座そのもののかたちを写してそれを逆さにすることで、モニュメントというものがもつ意味や目的と……
[「序章」冒頭より/図は省略]