紹介
世界に通底するロシアの精神的カオスの“風景”……
「私は、ロシアの歴史、ロシアの精神の中に、世界の精神史にもその業績を留めうる“偉大”があると思っている」と自ら書き、リハーチョフの言葉「ロシアの民衆が《馬鹿》を愛するのは、彼らが愚かではなく、賢いからです」を引く著者の目から描き出されたロシア民衆の精神の深層世界……。
著者の深部に秘められたモティーフには〈反骨〉と〈アンチ排除〉の姿勢があり、それ故にロシア正教儀式に抵抗する「分派・古儀式派」やデカブリストなどの敗者の側への温かい眼差しがある。
長く高校教師を続けながら独自にロシア史研究を重ね、定年後は現地調査の成果を入れた論文執筆の途次に急逝した著者の遺稿集。
目次
▼収録目次
●第一篇 「ロシア精神史」へのアプローチ
第一章 正教分離派とロシアの特性
第二章 ロシア正教史
第三章 西欧派対スラヴ派
●第二篇 「西欧近代」を問う
序章
第一章 西欧批判
第二章 西欧近代の矛盾
第三章 ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
結び
●第三篇 「ロシア霊性」への旅
はしがき
第一章 オプティナ修道院を訪ねて
第二章 イコンについて
第三章 旧教徒について
●第四篇 ロシア人の信仰
はしがき
第一章 大地信仰
第二章 瘋癲行者(ユロージヴィ)信仰
第三章 旧教徒(古儀式派)のその後
●第五篇 ロシア一九世紀論(未完原稿)
はしがき
序章一 ピョートル改革と農民政策
序章二 エカテリーナ時代
第一章 アレクサンドル一世時代
●解説にかえて
一 《マヤコフスキー学院》の野口和重さん
(マヤコフスキー学院講師)杉里直人
二 解説風に〜私的思いをまじえて〜
(群馬大学名誉教授)五十嵐誠毅
三 野口和重さん論文要旨
(立教大学教授)森 秀樹