目次
献辞
謝辞
序文[ノラ・ワルン:全米アルメニア・シリア救援委員会広報局長]
序章 アルシャルス、曙の光
第1章 パシャが来た時
第2章 恐ろしい日々の始まり
第3章 ヴァビ・ベイの選択
第4章 ケマル・ベイの残酷な微笑
第5章 ザプティエのやり方
第6章 徴募とコンスタンチノープルのハーレム
第7章 マラティア、死の町
第8章 ハッジ・ガフルのハーレムで
第9章 襲われた修道院
第10章 剣の遊び、そしてディヤルバクル
第11章 「イシム ヨック、ケイフィム チョック」
第12章 再会とシェイク・ジラン
第13章 ヴァルタベッド翁と羊飼いの呼ぶ声
第14章 アンドラニク将軍の伝言
解説「アルメニア人虐殺事件とその余波」[渡辺大作]
訳者あとがき[上野庸平]
前書きなど
訳者あとがき
本書は第一次大戦中のオスマン帝国下におけるアルメニア人虐殺の問題を描いたドキュメントとして一九一八年にアメリカで出版されたRavished Armenia: The Story of Aurora Mardiganian, the Christian Girl Who Lived Through the Great Massacresを全文邦訳したものである。主人公のオーロラ・マルディガニアン(Arshaluys Mardigian)は一九〇一年に現在のトルコ東部エラズー県チェミシュゲゼックに生まれたアルメニア人女性で、十四歳でアルメニア人虐殺に遭い、ロシアを経由して難民としてアメリカに渡り、一九九四年にロサンゼルスで没した。
お気づきの方もいるかもしれないが、本書はアルメニア人少女・オーロラがある日突然家族とともに行き先も分からぬまま連行され、道中で苛烈な虐殺や性暴力に直面し、最終的にアメリカにたどり着くという「体験記」として書かれているものの、まったくの実話というよりは、アメリカ人の作家ヘンリー・レイフォード・ゲイツ(Henry Leyford Gates)が彼女の語りに脚色を加えて執筆したものである。第一次大戦の終戦直後という時代性もあって、戦争の大義と連合国の戦勝、そして西洋・白人・キリスト教至上主義的な人道精神に酔うアメリカ人の琴線をくすぐるような表現にあふれている。この点で、例えば『アンネの日記』のような純粋な体験文学とは異なるいわば「プロパガンダ文学」(アルメニア人にとっては無礼な表現かもしれないが)という側面も持つ作品であると言えるだろう。
(…後略…)