目次
読者への覚書
序論
第一章 不平等とその変化の測定
第二章 資本/労働の不平等
第三章 労働所得の不平等
第四章 再分配の手段
訳者解題
引用・参考文献
索引
前書きなど
訳者解題
本書は、Thomas Piketty, L’économie des inégalités, La Découverte, 2015の全訳である。原題は『不平等の経済学』であるが、本書のタイトルは、ピケティの主張点を生かす意味で『不平等と再分配の経済学――格差縮小に向けた財政政策』とした。本書は、ラ・デクヴェルト社のルペール・シリーズの一冊として、一九九七年に初版が刊行され、以来今日まで七版を数えている。本書はその最新版(二〇一五年刊)を訳したものである。ルペール・シリーズの扱っている領域は、社会科学から文化に至る広範囲に及んでおり、その中で本書は言うまでもなく、経済学の分野に属す。
基本的にルペール・シリーズは、学生や専門家を中心とする読者層に、各テーマについてわかり易く解説した標準的な概説書のスタイルをとっている。そこで本書も、「不平等」のテーマを、とくに経済学の視点から基準となる考え方を説き明かしたものである。ただし、本書は、いわゆる通常の経済学のテキストと異なり、経済のみならず、社会、政治、ならびに教育のかなり多くの分野をカバーしている。不平等の問題が、経済を軸としながらまさに総合的に論じられているのである。その意味でピケティの言う経済学は、広義の経済学を指す。本書が、今から二〇年以上も前に出版された点を踏まえると、彼は研究テーマとして当初より不平等問題を取り上げていたと同時に、それを、たんなる経済学の理論的枠組の中でのみ考えるのではなく、いっそう幅広い視点に立って捉えようとしていたことが、本書よりうかがい知ることができる。
(…後略…)