目次
はしがき[杉村美紀]
序章 人の国際移動と多文化社会の変容[杉村美紀]
第1章 ドイツの歴史教育における移民国家像の変容[近藤孝弘]
第1節 外国人法から移民法へ
第2節 歴史教科書に見る移民の記憶史
第3節 ドイツの歴史教育における移民像の変遷
第4節 人権と経済的合理性の追求
第2章 ベルリン・ノイケルンにおける移民統合の試み[アーノルト・メンゲルコッホ]
第1節 ノイケルン区における移民政策の背景
第2節 統合政策とその目的
第3節 総合的な政策の必要
第4節 「ノイケルンは難民を歓迎します!」
第5節 市民としての移民を目指して
第3章 マレーシアの「複合社会」と移動する人々――マイグレーションとしての外国人労働者・留学生に対峙する国民国家[杉村美紀]
はじめに
第1節 「複合社会」を抱える国民国家マレーシア
第2節 外国人労働者をめぐる問題
第3節 留学生受け入れをめぐる問題
おわりに:「複合社会」を抱える国民国家の重層性
第4章 フランスにおける外国籍児童生徒と移民の子ども――学業達成と職業参入にみる課題[フランソワーズ・ウヴラール/園山大祐]
はじめに
第1節 移民とは
第2節 外国籍および移民の子ども
第3節 外国籍児童生徒または新規入国者の受け入れ体制
第4節 学力と学業達成
第5節 職業参入
おわりに
第5章 フランスにおける社会統合と女性移民の地区外逃避――リヨン市郊外にみる女性移民の成功モデル[園山大祐]
はじめに
第1節 郊外とは
第2節 郊外の若者調査
第3節 郊外の若者の移行問題:ブロン=パリリー市にみる五つのタイプ
第4節 地区に残るか、残らないか
第5節 女性移民の地区外逃避成功モデルの特徴
おわりに
第6章 ラテンアメリカ人移民の変容と国家――在外コミュニティの動向と政策から[江原裕美]
第1節 ラテンアメリカ出身の国際移民の行き先とプロフィール
第2節 近年のラテンアメリカ出身移民の移動傾向
第3節 国外移民をめぐる政策:ブラジルの例から
第4節 ラテンアメリカにおける国際移民と国家の役割
第7章 ブラジルにおける外国人移民と教育課題――サンパウロを中心に[二井紀美子]
はじめに
第1節 ブラジルに居住する移民の社会的・文化的背景
第2節 移民と学校
第3節 移民をめぐる教育の現代的課題と取り組み
おわりに
第8章 移民と社会を橋渡しするドイツのNPO[丸山英樹]
はじめに
第1節 トルコ移民の多様な背景
第2節 敷居の低さが移民を参画させる
第3節 世界に展開する移民福祉事業の評価
おわりに
終章 多文化共生をめぐる「国民国家の新たなありかた」と移動する人々[杉村美紀]
第1節 国際移動時代における国民国家
第2節 多文化主義をめぐる課題
第3節 トランスナショナル・マイグレーションと教育の役割
あとがき[杉村美紀]
前書きなど
グローバル化に伴う人の移動が活発化するのに伴い、多文化社会にどのような課題があり、それに対してどのように対応するかということは今日、喫緊の問題となっている。教育においても、多様化する教育現場で、社会の教育政策の方向性や、それに対して一般の人々が持つ教育需要とのあいだで様々な意見や立場の違いがあることをふまえ、移動する人々を多く抱える社会における教育のあり方が議論されてきた。
こうした様々な移動の中で、人々の生活や社会への適応を支える教育分野では、「移動する人々をいかに受け入れるか、あるいは、人々は移動先でどのような教育を受け、異なる文化を持つ社会に対峙しているか」という観点から研究が蓄積されてきた。そうした先行研究を土台に、本書では、教育に焦点を当てながらも、人の国際移動が、社会文化的背景や移動に対する国民国家の教育政策の中でいかに捉えられているか、あるいは移動する人々は、国家の枠組みや移動先の市民社会の中でどのように移動を考えているかという観点から、人々の移動そのものに焦点を当てた分析を行うこととした。いわば「移動」そのものを比較教育学的視点から見つめ直してみようというのが本書の趣旨である。
(『はしがき』より抜粋)