目次
Ⅰ.わが国の歴史の形成と古代国家
1.韓半島に朝がおとずれる
2.古朝鮮が建国され、諸国があらわれる
3.三国が中央集権国家に成長する
4.新羅、三国を統一する
5.南北国時代を開く
6.東アジアの諸国と交流する
まとめ
Ⅱ.高麗と朝鮮の成立と発展
1.後三国を統一して体制を整える
2.支配勢力が交代する
3.高麗、世界に開かれる
4.新しい国、朝鮮を建国する
5.士林が成長する
6.民族文化が発達する
7.両乱を克服する
まとめ
Ⅲ.朝鮮社会の変化と西欧列強の侵略的接近
1.資本主義が発達する
2.帝国主義国家、アジア・アフリカを侵略する
3.帝国主義に立ち向かい、近代化をはかる
4.農業と商品貨幣経済が発展する
5.考えが変わって世の中が変わった
6.勢道家門の世の中、三政も乱れる
7.興宣大院君、改革を断行する
8.通商修交を拒み洋擾が起こる
まとめ
Ⅳ.東アジアの変化と朝鮮の近代改革運動
1.清と日本で近代改革運動が起こる
2.不平等条約を結び開港する
3.開化政策を推し進める
4.開化政策に反発する
5.甲申政変を起こす
6.朝鮮をめぐり列強が争う
7.開港後、社会・経済が変化する
まとめ
Ⅴ.近代国家樹立運動と日本帝国主義の侵略
1.韓半島を占領するために戦争が起こる
2.中国、民主共和国をたてる
3.東学農民運動が起こる
4.近代的改革を推し進める
5.近代主権国家をうちたてようとする
6.経済侵奪に立ち向かう
7.国権を奪われる
8.抗日義兵運動が起こる
9.愛国啓蒙運動を展開する
10.近代社会に進む
11.近代文物の受け入れで生活が変わる
まとめ
Ⅵ.日帝の植民地支配と民族運動の展開
1.第一次世界大戦が勃発しロシアで革命が起こる
2.反帝国主義民族運動がアジアを席巻する
3.植民地支配が完成する
4.植民地の経済基盤を構築する
5.朝鮮の独立を宣言する
6.大韓民国臨時政府が活動する
7.独立軍が日本軍に立ち向かう
8.独立より実力が先だ
9.社会運動が活性化する
10.理念と路線の違いを超えて団結しよう
まとめ
Ⅶ.全体主義の台頭と民族運動の発展
1.全体主義国家が登場し、第二次世界大戦が勃発する
2.日本、東アジアを侵略する
3.日帝、支配政策を変える
4.朝鮮人の民族性を抹殺し、戦地へ送り込む
5.抗日連合戦線を結成する
6.民族文化運動、皇国臣民化に立ち向かう
7.建国を準備する
8.国際社会、韓国問題を議論する
まとめ
Ⅷ.冷戦体制と大韓民国政府の樹立
1.冷戦が展開される
2.8・15光復、そして分断
3.民族の分裂と対立が深刻化する
4.大韓民国政府が発足する
5.政府樹立前後の社会・経済
6.6・25戦争が起こる
7.南北が対立し、集権体制を強化する
8.戦後の社会・経済的変化
9.冷戦体制の中の分断
まとめ
Ⅸ.大韓民国の発展と国際情勢の変化
1.冷戦体制が崩れる
2.4・19革命が起こる
3.5・16軍事政変と維新体制
4.民主主義が発達する
5.近代的な産業国家に発展する
6.農民と労働者が権利を要求する
7.市民社会運動が成長する
8.大衆文化が発展する
9.北韓で唯一体制が確立する
10.南北対立の中で平和を模索する
11.私たちが克服すべき東北アジアの歴史摩擦
12.発展する大韓民国、世界に向かって
まとめ
訳注
訳者あとがき
前書きなど
訳者あとがき
本書は、韓国の『高等学校韓国史』(三和出版社、2011)の翻訳である。
韓国では、2007年に教育課程[学習指導要領にあたる]が改訂され、それまでの教科名「国史」が、「歴史」となった。これは、国際化時代に対応して自国史中心の歴史教育から抜け出すため、それまでの自国史(国史/韓国史)と世界史を統合し、かつ中学・高校時代に自国史をくり返し学ぶことのないようにするという明確な目標を持っていた。つまり、中学校では韓国の前近代史を中心にしながら世界史も学び、高校では韓国近現代史と世界史をともに学ぶことによって、世界史的脈絡の中に韓国史を位置づけようとしたものであった。これが実現すれば、画期的な教科書となったであろう。一つは、自国史中心の歴史学習をやめようとしたこと、もう一つは自国史のくり返しの学習が止揚される可能性があったことである。
さらに、2007年教育課程では、高校選択科目として「韓国文化史」「世界歴史の理解」「東アジア史」が想定されていた。なかでも「東アジア史」は、韓中日三国を中心にした東アジア地域の歴史を学ぶ科目として設定されたのである。これは、東アジア地域で初めて設置されたものであった。
この教育課程は、2009年から順次現場で実施され、2012年までに小学校・中学校・高校の全学年で実施されることになっていた。
ところが、2009年、教育科学技術部[文部科学省にあたる]が「未来型教育課程」を発表し、2011年から適応していった(これは、その後名称を改め「2009年教育課程」という)。一方的に発表・実施されたこの教育課程は、学校現場に混乱をもたらし、また「歴史」を「韓国史」に変えて自国史教育の強化をめざし、高校選択科目は「世界史」(「世界歴史の理解」の名称を変えた)と「東アジア史」の2教科だけにしてしまった。さらに、教科書執筆者たちは、2007年教育課程に基づいて執筆していた「歴史」教科書を新しい教育課程に合わせて急遽「韓国史」として書き直す作業に追われることになった。
これが本書のもととなった「韓国史」が出版されるまでの経過である。だが、2011年には再び教育課程が改訂され、2014年3月から新しい「韓国史」教科書が出版される予定である。子どもたちの負担を軽減するとして、例えば「韓国史」では9単元(現在)を8単元に、「世界史」では8単元を7単元に、そして「東アジア史」では7単元を8単元にするとしているが、内容自体はそれほど変わらないので、枠組みを変えただけになる恐れがある。
このように、2008年に李明博氏が大統領になってから、頻繁に教育課程が改訂され、「短命な教科書を眺めながら筆者たちは徐々にくたびれていき、初めから教科書執筆を放棄したり、絶筆を宣言した」(具蘭喜「韓国の歴史教育課程の変化と残った課題」、日韓歴史教科書ワークショップでの発表、2012年11月24日)人たちも多いという。
それでも、本書(のもとになった「韓国史」教科書)を選び、翻訳したのは、6社の「韓国史」教科書の中で、唯一現場の教師たちが執筆したものであったからである。もちろん歴史研究者とも連携をとりながら、現場の教師が執筆することには大いに意味がある。子どもたちの認識や発想をよく理解し、日頃の授業で子どもたちと取り組みながら、その歴史認識を鍛えているのは現場の歴史教師である。歴史研究者の中にも歴史教育に関心を持ち、子どもたちが理解しやすい叙述を心がけている人も多いだろう。だが、研究者はどうしても教育の内容から発想しがちである。歴史の教師は、子どもの関心とかかわらせて授業を展開する。したがって、関心を高める教材を提示したり、子どもたちの意見を大事にすることから授業を想定していく。いわば、教育の方法からも子どもと授業を考えるのである。こう考えて、いくつもの「韓国史」教科書から本書を選んだ。読者のみなさんが本書を読まれて、こうした韓国の教師たちの思いを感じてもらえれば幸いである。
(…後略…)