目次
はじめに——全体構想と分析方法(中村則弘)
1 目的・課題と編集方針
2 研究手法のバランスについて——分析において留意した内容
3 叢書の全体構成
おわりに
序章 チャイニーズネスとトランスナショナルアイデンティティ(永野武)
第1節 はじめに
第2節 ネイション,エスニシティ研究の系譜
第3節 グローバリゼーションのもつ意味
第4節 本書の構成
第1部 歴史からの問い
1章 戦後在日華僑社会の構成および変動と「老華僑」の組織・ネットワーク形成(永野武・過放)
第1節 はじめに
第2節 近年の日本在留中国人数の推移
第3節 戦後日本在留中国人の構成および変動
第4節 「老華僑」の組織・活動・ネットワーク形成
第5節 むすび
2章 ニューカマーズとオールドカマーズ——新旧華僑・華人の人間関係相互考察(永野武)
第1節 はじめに
第2節 留日華僑連合総会までの道程
第3節 ニューカマーズ
第4節 新旧華僑および華人が相互に向けるまなざし
第5節 むすび
3章 中国におけるエスニック・ネーションの起源——孫文はいかにして「民族主義者」になったか(穐山新)
第1節 孫文と中国「民族主義」の歴史社会学
第2節 分析視角——エスニック・ネーションと社会的な場
第3節 華僑社会——グローバルな地縁・血縁の在外同胞
第4節 日本留学生集団——「中等社会」と郷土愛
第5節 結語
第2部 トラスナショナルなアイデンティティ
4章 「中国帰国者」の歴史/社会的形成——国民,エスニシティ,コミュニティ(南誠)
第1節 「中国帰国者」への視角
第2節 「中国帰国者」の歴史的形成——「中国残留日本人」をめぐる排除と包摂
第3節 「中国帰国者」の境界の変遷——「中国残留日本人」の国家賠償訴訟運動をめぐって
第4節 おわりに——「中国帰国者」とディアスポラ
5章 滞日中国人による永続的「ソジョナー」アイデンティティの形成——トランスナショナルな移動者としての中国人留学生(坪谷美欧子)
第1節 はじめに
第2節 トランスナショナルな移住者とソジョナー・アイデンティティへの視座
第3節 「永続的ソジョナー」意識の形成と重層的アイデンティティ
第4節 「永続的ソジョナー」中国人による社会統合と「中国人性」
第5節 むすびにかえて
6章 石垣島の台湾人——現代に残響する植民地下の双方向的移動(野入直美)
第1節 ある台湾系学生との出会い
第2節 植民地支配下での移動
第3節 戦後の再移住
第4節 集住部落の解体
第5節 新しい世代——残響する人の移動の意味
第3部 社会の多元性
7章 中国移行経済における独裁的企業運営の採用——組織環境,人的資本,文化大革命中の国内移住経験が及ぼす影響(Eric Fong, Xinshan Cao, HanYue Ngo)
第1節 はじめに
第2節 先行研究の検討
第3節 データおよび手法
第4節 分析結果
第5節 結論
8章 台湾における多文化社会の展開と「新移民」問題(金戸幸子)
第1節 はじめに
第2節 台湾における「新移民」増加の背景と動態
第3節 外国籍配偶者増加の背景と要因
第4節 「新移民」増加に伴って浮上した主な社会問題
第5節 移民・外国人をめぐる政策的展開
第6節 移民・外国人をめぐる政策的展開の現段階における課題
第7節 おわりに
結章 (永野武)
第1節 問題群
第2節 研究戦術としての境界性
第3節 本巻の知見から
おわりに
前書きなど
はじめに——全体構想と分析方法(監修者代表:中村則弘)
(…前略…)
第4節 本書の構成
以上のことから,本書は国民国家を支えてきた重要な要素であるネイション,ナショナルアイデンティティを,「チャイニーズネス」に着目することによって,批判的にとらえなおすことを目的としている。この目的のための手法として,一種の迂回を行う。中国で暮らしている「中国人」を,主要な研究対象とはしない,ということである。むしろ周辺から迫ることによって,「チャイニーズネス」をまさに浮き彫りにする,という研究上の戦略である。
本巻の構成は,以下の通りである。
第1部「歴史からの問い」は3本の論文からなっている。永野武・過放「戦後在日華僑社会の構成および変動と『老華僑』の組織・ネットワーク形成」,永野武「ニューカマーズとオールドカマーズ——新旧華僑・華人の人間関係相互考察」,そして,穐山新「中国におけるエスニックネーションの起源——孫文はいかにして『民族主義者』になったのか」である。
第2部「トランスナショナルなアイデンティティ」は3本の論文からなっている。南誠「『中国帰国者』の歴史/社会的形成——国家,エスニシティ,コミュニティ」,坪谷美欧子「滞日中国人による永続的『ソジョナー』アイデンティティの形成——トランスナショナルな移動者としての中国人留学生」,そして,野入直美「石垣島の台湾人——現代に残響する植民地下の双方向的移動」である。
第3部「社会の多元性」は2本の論文からなっている。Eric Fong, Xinshan Cao, Han Yue Ngo「中国移行経済における独裁的企業運営の採用——組織環境,人的資本,文化大革命中の国内移住経験が及ぼす影響」と,金戸幸子「台湾における多文化社会の展開と『新移民』問題」である。
以上の各論文を踏まえた結章で,まとめと今後の展望について述べている。