目次
まえがき
序言 七十年の内戦
第一章 分裂した社会 一九三一年以前のスペイン
近代化への苦悶
進歩と反動
大地主の権力
束の間の第一共和国
王政復古政治体制 ほか
第二章 左派の挑戦 一九三一年から一九三三年まで
全スペイン人のための共和国
右派の反応
偶然主義と破局主義
教会と陸軍
セグラ大司教の教書 ほか
第三章 対決と陰謀 一九三四年から一九三六年まで
「暗黒の二年間」
社会党員の憤激
アナキストの蜂起
対立の激化
アストゥリアス十月革命 ほか
第四章 クーデターから内戦へ
テロルの役割
セビリャ制圧
グラナダの惨劇
妥協への模索
労働者への武器配布 ほか
第五章 列強、スペインを裏切る
ファシズムへの対応
イギリスの思惑
フランスの危惧
孤立主義の中のアメリカ
スターリンの当惑 ほか
第六章 中心的叙事詩
ヒラル内閣からラルゴ・カバリェロ内閣へ
アナキストの入閣
共和国政府の移転
マドリード防衛評議会
国際義勇兵 ほか
第七章 神の都市の反動とテロル
ナショナリスト陣営の団結
戦略としての虐殺
潜在的脅威の除去
ドン・フアン王子の申し出
ファル・コンデ追放 ほか
第八章 悪魔の都市の革命とテロル
職業軍人への疑念
法と秩序の一時的喪失
クンパニスとCNT代表団
二重権力
戦争か革命か ほか
第九章 段階的敗北
ゲルニカ爆撃
ナショナリスト軍、北部を制圧
ブルネテの戦い
アラゴン攻勢
フランコ、内閣を組織 ほか
第十章 フランコの平和
内戦終結後の弾圧
死者数把握の諸問題
カウデの縦穴
祖父の遺骨
歴史的記憶回復協会勝者と敗者の分離 ほか
エピローグ
訳者あとがき
主要人物・組織
事項原語一覧
人名索引
前書きなど
まえがき
わたしは本書の最初の版を二十年前に書いた。当時のわたしの意図は、新しい読者に、スペイン内戦が書物の上でなお戦い続けられていることから来る書誌学的迷路を通り抜けるための、手ごろなガイドを提供することにあった。当時でさえスペイン内戦については数千冊の本があり、それらの多くはきわめて大部のものだった。この流れは止まらなかったので、わたしは、最初の版が出てからの十年間に発表された諸文献を考慮に入れて、一九九六年にこれをリライトした。その時点で、その後さらにどれだけの書物が現われるかは想像できなかった。したがって、今回のこの増補版は、一九九六年以後、スペイン語、カタルニャ語、英語、その他のヨーロッパ諸語によって発表されたきわめて大量の学問的蓄積に対応するための一つの試みである。同時にこの本は、フランコ、フランコ派による弾圧、そしてスペイン内戦におけるムッソリーニの役割についての、その後のわたし自身の研究の成果をも取り入れている。避けがたいことだが、新しいこの本はかなり長くなった。——本文は一九九六年の版よりも五〇パーセント長い。前の二つの版と同様、本書は論述的というよりむしろ解説的であるが、以前よりもさらに多く同時代資料からの引用を行なうことによって、時代の雰囲気が伝わるよう意を用いた。
本書は、スペイン共和国政府とナショナリスト反乱軍の双方の側に対して完全にバランスのとれた観点に立つものではない。わたしはフランコ独裁下のスペインで数年間生活した。労働者や学生に対する抑圧や、検閲制度、政治的投獄などに気づかずにいることは不可能であった。一九七五年になっても政治囚はなお処刑され続けていた。フランコ支持者の主張とは異なって、わたしは、スペインが一九三六年の軍事蜂起、一九三九年のナショナリスト軍の勝利から利益を得たとは思っていない。一九三〇年代とそれ以前の時期のスペインの研究に長い歳月を費やしてきた結果、わたしは、次のように確信している。多くの過ちは犯されたものの、スペイン共和国は、抑圧的社会の恵まれない人々に、よりよい生活手段を与えようとする果敢な企てであった、と。このような挑戦に対してフランコとその追随者が加えた報復は残酷で無慈悲だった。したがって、本書にはスペイン右派に対するシンパシーはいささかも述べられていない。しかし、彼らの立場を理解する努力はしたつもりである。
(…後略…)