目次
わたしの確認表
臨床家の方へ
この本にかいてあること
ステップ1 自分のことをしろう
ステップ2 「カウンセリング」ってなんだろう?
ステップ3 正しいタッチ
ステップ4 わたしの歴史 わたしにおこったこと
ステップ5 境界線
ステップ6 よい性と人間関係
ステップ7 正しい考えかた
ステップ8 きっかけ
ステップ9 危険ゾーン
ステップ10 選択
ステップ11 気もち
ステップ12 行動のサイクル
ステップ13 被害者と共感
ステップ14 再発防止計画
ステップ15 復習してまとめよう
ステップ16 ステップを実行して生きる
フットプリントにでてきたことば
付録 性の歴史ワークシート
参考文献
監訳者あとがき
前書きなど
監訳者あとがき——Footprintsによる反社会的行動のある知的障害者への心理教育的アプローチと支援
(…前略…)
本書は、「臨床家の方へ」にあるように『PathwaysやRoadmapsで使われている再発防止モデルと、発達障害(知的障害)のある性犯罪者の治療現場から得られたデータや概念を組み込んでつくられたもの』である。個人治療またはグループセッションで実施される記述式のワークブックの形式である。認知行動療法の手法をもとにして、自己コントロール力、セルフマネジメント力を高めることを重視している。全部で16のステップからなり、それぞれのステップは、解説といくつかの「宿題」で構成されている。各ステップの最後には、必ず正しい方向と間違った方向を確認する課題、ステップの内容を復習し、自己コントロールのために「セルフトーク(自分のことば)」が示される。
性行動を本書では「タッチtouching」と呼び、通常の健康的な性行動を「正しいタッチ」とし、逸脱した性問題行動を「まちがったタッチ」とする。
「まちがったタッチ」を修正するために、セルフモニタリングとしての日記(スターチャート)、自己と他者、公(パブリック)と私(プライベート)を区分する「境界線」の概念、性行動のルールである「同意と許可」を心理的に(再)教育する。ステップ4において、これまでの自己の性行動の歴史をふり返ったうえで、ステップ7では『あなたの脳が、あなたの体を動かしている』と行動の主体としての自己を確認し、『まちがった考え方をするから、まちがったタッチをする』と思考・行動・その相互作用、とりわけ思考の誤りを修正の対象とする。ついで、被虐待・被害体験の影響も想定される未分化なままの感情の気づきが導入される(ステップ11)。ステップ12において、「まちがったタッチ」は、きっかけ・感情・思考・計画・行動の実行というサイクルから生み出されるとし、きっかけや危険ゾーンを回避するプランなどそれまでのステップにおいて学習した行動概念を使って悪い行動のサイクルを良いものに修正する。最後に、対象者の被虐待・被害体験を取り扱いつつ被害者への共感の形成、再発防止のためのプラン作りへと展開される。
順にステップを進んでいくことが望ましいが、状況により順番の変更は可能であるとされている。そのためには、本書の構成やすすめ方を理解し、アセスメントを経たうえで実施すべきであることはいうまでもない。また、本書における「境界線」、「同意と許可」、「感情のコントロール」などの行動のルール、あるいはコントロールは、他の反社会的行動やより広汎な対象者の指導や教育においても導入可能な考え方であろう。
(…後略…)