目次
はじめに——全体構想と分析方法(中村則弘)
1. 目的・課題と編集方針
2. 研究手法のバランスについて——分析において留意した内容
3. 叢書の全体構成
おわりに
序章 現代中国家族をどう捉えるか(首藤明和)
第1節 分岐する現代中国家族
第2節 分析の準拠枠組み
第3節 本書の構成
第1部 「個人と家族」再考のために
1章 漢人家族の「個人と家族」の再考に向けて(首藤明和)
第1節 漢人家族に対する研究者の立ち位置
第2節 漢人家族変動を捉えるための枠組み
第3節 「漢人家族の一般分析モデル」の分析射程
第4節 漢人家族の「個人と家族」の再考に向けて
2章 現代中国都市家族の社会的ネットワーク——無錫市の事例から(落合恵美子)
第1節 世帯構造から社会的ネットワークへ
第2節 無錫市における家族調査の事例から
第3節 現代中国都市家族の社会的ネットワーク
第4節 現代アジア家族と中国家族
第5節 中国家族の近未来
3章 身体文化が生み出す規範と生活指針——ある武術家のライフ・ヒストリーから(池本淳一)
はじめに
第1節 中国社会における人間関係とその構造
第2節 徐建智氏の生い立ちと武術との出会い
第3節 「拝師」と擬制的親族
第4節 地域の仲裁役としての武術家
おわりに
第2部 「近代家族」への問い
4章 漢人家族の代親機能と老親扶養——女性の「社会圏子」に着目して(首藤明和)
第1節 漢人家族に関する命題
第2節 調査の概要と調査地概況
第3節 アンケート回答者の基本属性
第4節 性別分業規範および代親機能と女性の「社会圏子」
第5節 老親扶養と女性の「社会圏子」
第6節 課題と展望
5章 転換期中国の多様化する婚姻観(陳鳳)
はじめに
第1節 伝統的な婚姻観とその変容
第2節 中国における結婚事情
第3節 中国における離婚事情
おわりに
6章 中国都市部における社区建設の取組みと高齢者への対応(長田洋司)
はじめに
第1節 中国社会の変化と社区建設までの変遷
第2節社区建設の基本的枠組み
第3節 中国社会における家族形態の変化
第4節 社区建設の現場から見る高齢者対応
結びにかえて
第3部 農村家族の変容にみる再編と解体
7章 中国農村家族の変化と安定──山東省の事例調査から(小林一穂)
第1節 家族農業経営と農村社会
第2節 中国農村の現状
第3節 山東省農村の事例
第4節 中国農村家族の変化の方向性
8章 離村時代の中国農村家族——「民工潮」がもたらした農村社会の解体(張玉林)
第1節 農民流動と「中国式離婚」
第2節 「留守番児童」
第3節 世帯の「空巣化」と独居老人
第4節 討論
結章 現代中国家族の理論的理解に向けて(首藤明和)
第1節 中国家族を支える形態と論理
第2節 親族ネットワークの両系的な強さ
第3節 婚姻観の「多様化」と選択の契機における「個人化」
第4節 計画経済時代に外部化された家族機能に対する担い手の欠乏
第5節 都市農村「二重構造」のなかの出稼ぎと農村家族の解体
第6節 兼業化の持続可能性と農村家族の再編
第7節 中国家族の理論的理解に向けて
あとがき
索引
編著者・執筆者略歴
前書きなど
序章 現代中国家族をどう捉えるか
第3節 本書の構成
本書は3部より構成される。各部の論点については,前節の準拠枠組みの紹介で述べたとおりである。以下に,各章の概要をみておこう。
(1)「個人と家族」再考のために
第1部「『個人と家族』再考のために」では,既述のように,現代中国社会において,人びとがそれぞれにユニークな人生を送るなか,「個人と家族」の距離はどのようにして保たれているのか,そのなかで,個人を起点とした社会的ネットワークは,どのように編み出され展開しているのかを考察する。とくに,民俗的な家族観念(1章)や,ライフコースと社会的ネットワーク(2章),民衆世界の価値規範(3章)などから「個人と家族」のあり方が問われる。
(…後略…)
(2)「近代家族」への問い
第2部は,現代中国家族を〈近代家族〉との比較対照を念頭に置いて分析する。中国家族の実態からは,「家族であること」を支える人間関係には,さまざまなパターンが存在することが明らかになる。ここからは,〈近代家族〉がひとつの家族類型に過ぎないことが再確認できるだろうし,また,〈近代家族〉以外の生き方に対する展望や理論化の足掛かりも得られるだろう。
(…後略…)
(3)農村家族の変容にみる再編と解体——「都市と農村」の「二重構造」のなかで
第3部は,「農村家族の変容にみる再編と解体」についてである。前節で述べたように,中国の農村社会は,国家や市場との関係のなかで激しく変動しており,都市農村の「二重構造」の内容も絶えず変化している。農村家族は,外発的に変化を余儀なくされる場合もあれば,内発的に対応していく場合もある。7章,8章の論考から明らかになるのは,市場経済への対応のなか,農業部門を維持しながら農外就労によって生計を立て,兼業化を進めるなかで家族のあり方を「再編」してゆく姿と,兼業化ではあっても,農外就労機会が遠方の都市部であり,被傭兼業は長期の出稼ぎ型が主流となって家族の離散を招き,家族そのものが「解体」してゆく姿である。
(…後略…)