紹介
この社会にあわせて生きていくしかない…と諦めてはいけない――。
安定的で同質的な包摂型社会から、変動と分断を推し進める排除型社会への移行にともない、排除はつぎの3つの次元で進行した。
1 労働市場からの排除
2 人々のあいだの社会的排除
3 犯罪予防における排除的活動
かつての包摂型の社会を懐かしんでも気休めにもならない。取り組まなければならない課題は、新たな形態のコミュニティ、市場の気まぐれに左右されない雇用、八百長のない報酬配分――これらをどう実現するかである。
「画期的な書物。驚異的なまでの博識、事実への深い洞察、明晰な論旨と論証が結びついたこの著作に、私は圧倒された。」――ジグムント・バウマン
目次
序文
第1章 ┃ 包摂型社会から排除型社会へ
狂ったコンパス
近代主義のパラダイム――たったひとつの世界
包摂型社会から排除型社会へ
多元主義と存在論的な不安
犯罪の二項関係
増加する犯罪と社会的排除
排除の暗黒世界が到来する?
排除の行方
アメリカン・ドリームとヨーロピアン・ドリーム
スケープゴートの機能
結論――ゲントからの報せ
第2章 ┃ 後期近代における犯罪と不協和音
近代の危機
基本に帰れ
近代主義への挑戦
後期近代への移行――犯罪と犯罪統制の概念の変化
相対的剥奪感と個人主義
ノスタルジーと衰退
犯罪と欠乏
第3章 ┃ カニバリズムと過食症
人間を飲み込む社会と吐き出す社会
社会統制のヴィジョン
寛容性の長期的な低下傾向?
近代主義の世界
包摂主義とその急進派
後期近代の変容
保険統計主義の出現
保険統計主義と「新刑罰学」
保険統計主義とリスク社会
よそ者とともに生きる――リスクを構成する六つの要素
環境世界とリスク・マネジメント
近代の理解しづらさとリスク批判
後期近代の進歩的な側面
社会的排除と市民
逸脱の原因としての包摂と排除
二つの実証主義の批判
包摂と排除――過食症としての後期近代
フィラデルフィア都心の事例
下位文化の概念
下位文化と多様性
金持ちは別の人間
フィラデルフィア再考
第4章 ┃ 他者を本質化する「悪魔化」と怪物の創造
多文化主義的エポケー
文化的革命における存在論的な不安
存在論的な危機にたいする多文化主義的な解決
本質主義が人々を惹きつける理由
他者を本質化する
生物学的本質主義と文化的本質主義
本質主義の詭弁
他者の悪魔化を成功させる条件
悪魔化と怪物の創造
本質主義と戦争の犯罪学
本質主義と社会的排除
第5章 ┃ 不寛容の犯罪学――ゼロ・トレランス政策とアメリカにおける刑務所拡大の試み
ウェストミンスターのセミナー――暴かれた奇跡
主張の誤りとカテゴリーの混同
「割れ窓」のリアリティ
モラル・パニックと特効薬――民衆の悪魔と無垢な聖女たち
犯罪を表面的に捉える誤りと社会を単純化して捉える誤り
後期近代への移行
寛容の限界
アメリカにおける刑務所拡大の試み
第6章 ┃ まとまりのある世界とバラバラの世界
正義の領域――能力主義の社会
左派と能力主義
正義は満たされるのか?――家族の役割
恣意的な規制
共同体の領域
正義と共同体
るつぼ/虹/モザイク
エリック・ホブズボームとアイデンティティ・ポリティクスの隆盛
第7章 ┃ カオスを放置する――軽く接しあう他人たちの秩序
リチャード・セネット、気乗りしない散策者
純化の過程
「ソフト・シティ」再考
理想化されたコミュニティ
同化されない他者たちに開かれた、抑圧のない都市
差異の多文化主義
他者に開かれて変容すること
強度の小さな差異
統合度の低い共同体と変容的多文化主義
再分配と認知、現状肯定的是正と現状変革的是正
正義の領域――能力主義の社会
共同体の領域――変容する他者
第8章 ┃ 後期近代――矛盾に満ちた世界
後期近代の矛盾した特徴
暗黒世界に対抗する事例
後期近代の社会契約
註 /訳者あとがき / 文献一覧 / 索引(人名・事項)