目次
はじめに
第1章 人口減少社会に生きる若者
【梶井祥子】
1 人口が減少する社会
(1)高校生調査の背景
(2)地域社会のあり方を問い直す政策
2 高校生たちの意識に寄り添う
(1)サイレント・マイノリティ(声なき少数派)の声
(2)北海道の高校生
(3)道内の大学生
(4)地域の磁力とは何か
(5)「所属の困難」と新たな生活価値
3 ソーシャル・キャピタルへの着目
(1)ロバート・D・パットナムのソーシャル・キャピタル論
(2)ソーシャル・キャピタルの類型
(3)ソーシャル・キャピタルの位相
4 高校生の地域へのまなざし
(1)関わりへの肯定感
(2)関わりへの懐疑
(3)今後への提言
5 まとめ
(1)「(幸福を実感できる)生活価値を高める政策」
(2)「ソーシャル・キャピタルと教育支援」
(3)「開かれた地域社会」から飛翔する若者
第2章 北海道の高校生の定住意向とソーシャル・キャピタルの関係についての一考察
【吉地 望】
はじめに
1 北海道の高校生の進路意向
2 高校生の定住意向(地元志向)に関連する先行研究
3 定住意向を規定する生活満足度に影響を与える三つの要素(経済規模、都市規模、ソーシャル・キャピタル)
4 ソーシャル・キャピタルと定住意向
5 進路と定住意向
6 親子の進路希望一致度
7 むすびにかえて
第3章 高校生が語る地域移動の志向
~35人のヒアリング調査結果から~
【三上直之】
1 『銀の匙』が描く高校生の現在
2 議論の枠組み
(1)ソーシャル・キャピタル概念に関する整理
(2)高校卒業者の進路と地域移動
3 ヒアリング調査の方法
4 タイプ別にみた高校生の姿
(1)道外志向または「キャリア中心の移動志向」
(2)北海道志向
(3)地元定住志向
(4)地元回帰志向
5 考察
(1)ソーシャル・キャピタルの効果
(2)回帰志向という希望
(3)「地元」とはどこか
(4)地元への愛着と、地域移動の選択との関係
第4章 地方創生と高校生のキャリア教育
~地域が子ども・若者を育てる“ホンキ”の取り組みとは~
【和田佳子】
はじめに
1 政策主導で進展してきた日本のキャリア教育の流れ
2 北海道の高校生のキャリア教育推進の方向性
3 キャリア教育と地方創生とのかかわり
4 本調査に見られた北海道の高校生のキャリア形成意識
5 市町村が子ども・若者を育てる取り組み
(1)特色ある鹿追町・鹿追高校の取り組み
(2)鹿追高校生へのヒアリング調査から
(3)ヒアリング調査から見えた高校生のキャリア形成意識(考察)
6 地域の中で育む、これからのキャリア教育〈まちが行うキャリア教育の類似事例〉
7 結びとして
第5章 むき出しの若者
~私達は何を渡せるか?~
【佐藤郁夫】
はじめに
1 現代的課題のソーシャル・キャピタル的視点
2 日本型、共同体的ソーシャル・キャピタル
3 北海道高校生の進路選択と推移
4 寮生活とソーシャル・キャピタル
5 寮生活から読み取れるもの
まとめ
第6章 ネット社会と高校生
【藤田香久子】
1 日本のネット環境と北海道
2 若者のネット環境と課題
(1)高校生とICT
(2)利用状況と課題
3 つながるということ
巻末資料(調査票/アンケート調査、ヒアリング調査概要)
前書きなど
はじめに
地域社会にとって「高校生」とはどのような存在だろうか。高校生たちは、「地域社会」にどのような関心を持っているのだろうか。
(中略)
2010(平成22)年の調査を受け継ぐかたちで、2013(平成25)年秋には道内11カ所1,720名の高校生を対象として「“若者と地域のつながり”に関するアンケート調査」(以後、「若者つながり調査」と略記)を実施し、その後5カ所でヒアリング調査(35名)を行った。
(中略)
調査協力校は道内の11校である。高校を選定するにあたっては、次のことを留意した。①北海道の広域性を考慮し地域の偏りを最小限にすること。②札幌都市圏の高校と地方の高校を選ぶこと。③普通科と専門(職業)高校の双方を選ぶこと。④私立高校を含めること。⑤寮(寄宿舎)のある高校を含めること。
実際に協力して頂いた高校は、三笠高等学校、札幌手稲高等学校、大谷室蘭高等学校、浦河高等学校、士別翔雲高等学校、稚内高等学校、網走桂陽高等学校、帯広農業高等学校、鹿追高等学校、標茶高等学校、中標津高等学校である。
調査学年については学校行事などの諸事情から実施校の判断に委ねることとなったため、1年生から3年生までバラつきが出た。「高校生」として一体に扱うこととした。各校とも対象学年全員への実施を条件とさせて頂いている。
アンケート調査、ヒアリング調査に関する概要一覧は本書の巻末にまとめて掲載した。
本書は社会学、経済学、経営学、キャリア教育学、国際広報メディア学を専門とする研究者が、それぞれの立場から「若者と地域のつながり」について論じている。結果として学際的な広がりを持つことになり、それが本書を特徴づけることにもなっている。
(中略)
本書は、調査にご協力いただいた高校生、各高校の諸先生方のおかげでまとめることができた。お忙しいなかでご尽力いただいたことに、あらためて心からの御礼を申し上げる次第である。高校生の皆さんの気持ちを十分に汲み取れていない部分もあるかもしれないが、若い世代が受け継ぐ地域社会がより善いものとなるよう、執筆者一同が真摯に取り組んだ。皆様からの忌憚のないご意見、ご批判を頂ければこの上もない喜びである。