前書きなど
≪はじめに≫
本書の姉妹編『ネイティブが話す【英単語・イディオム・決まり文句】』は幸いにも好評を博し、数多くの増刷を重ねました。日本の学校ではあまり強調されないが米国では日常よく使われている英語表現を厳選したうえ、類書には見られない社会言語学的手法による英語母語話者を対象とした使用頻度判定、TOFEL(Test of English as a Foreign Language)、TOEIC(Test of English for International Communication) 、英検2級での出題確率をマークで表示し、英国での使用頻度との比較まで表示したことが多くの賛同を得た理由であると思います。また、対話例についても従来のものとは異なり、最小限の長さにとどめ、内容も日本人が異文化間コミュニケーションの場で遭遇しやすい場面を設定した点も支持されました。
本書は、前書の長所を最大限に活かしつつ、261本の洋画(ここでは米国で制作された作品を中心とした英語の映画を指す)から収集した使用頻度の高い表現をもとに、米国、カナダ、英国、オーストラリア、日本に住む英語のネイティブ・スピーカーを対象とした広範囲なフィールドリサーチを経て厳選した表現集で、前書の読者でさらに豊富な表現力を習得したいと考えていらっしゃる学習者に最適です。同様に、本書をお読みになり納得がいった方には、前書もお読みになることをお勧めいたします。
自分の意思を自由に伝え、相手の言ったことを正確に理解するには、ある程度の決まり文句、構文パターンを頭の中に叩き込み、再生と修正を繰り返し、必要に応じて語彙を入れ替えたり、つなぎ合わせたりする経験が不可欠です。そして、そこで生じる言い間違いや文法の間違い(error)を恐れ、恥じていたのでは外国語学習は前進しません。第二言語習得(Second Language Acquisition)理論では、成人の英語学習者も時間をかければ、「通じる英語」(communicative English)から「正確な英語」(accurate English)へ移行し、最終的に「自然な英語」(natural English)を身につけることができるとされています。ネイティブ・スピーカーとまったく同様の英語力の習得は極めて困難ですが、ネイティブに近いレベル(near-native)に到達することは十分可能です。不断の努力を惜しまずにがんばりましょう。
最後に、本書を書き上げるまでにお世話になった以下の方々にこの場を借りて改めてお礼申し上げます。各表現項目の使用頻度のフィールドリサーチについては、英語圏に留学中の以下の方々にお願いしました。
佐藤裕美(米国カリフォルニア大学バークレー校)
真鍋かおり(米国ウエスタンミシガン大学)
寺島明子(カナダ・グローバルビレッジに参加中/バンクーバー周辺)
西多美香(英国ロンドン大学)
笹村寛之(オーストラリア・ウーロンゴン大学)
対話例は大学教官のDarla Deardorff先生(アメリカ)、Paul Ward先生(カナダ)、Brian Perry先生(イギリス)に最終的な校閲を依頼し、表現や語彙の正確さと自然さ、さらには文化的側面についてもていねいなフィードバックをいただきました。また、(株)語研の奥村民夫氏には語彙選択その他の点でいつもながら有意義な意見をいただきました。
本書が読者の皆様の英語学習成功の一助になることを心より願っております。
緑丘より日本海を眼下に
小林敏彦