前書きなど
生まれたばかりの子どもにとっては、母との二人の関係が最初の社会です。やがてそこに父や兄姉、祖父母も存在する小社会が形成されます。さらに、その子どもが保育園に通うことによって、子どもにとっての社会はより大きなものへと拡大していきます。
ふつうの保育園であれば、そこにいるのは子どもたちと保育士だけです。しかし世代間交流施設では、保育士という親の世代に加えて、高齢者という祖父母の世代との交流が可能になります。世代による考え方の違いに加え、多くの人のさまざまな知識を知ることができるのです。そこで話される言葉や話の内容には、母親世代の大人の言葉とは違って、長い人生を経て身につけてきた含蓄ある言葉がたくさん含まれています。時として子どもには意味の通じないこともありますが、わからないままに耳にしていることがあとで意味をもってくることもあります。
これは、とくに核家族化の進んでいる都市の子どもたちにとっては、貴重な経験になります。保育園に通うことによって、三世代が同居する家庭を疑似体験できるからです。そもそも、乳幼児だけ、高齢者だけ、という社会は、本来存在しないものだといえます。