紹介
◆「戦争をする」とはどういうことか◆
戦後65年、戦争待望論が若い人の間からも出るようになりました。アンチ格差社会として夢見られている面もあるようですが、現実の戦争はどのようなものだったのでしょうか。本書は一般の人間が兵士として召集され、戦場に征き、戦闘をし、負傷を負い、還ってくるまでを、小説のなかに探ったものです。『麦と兵隊』『土と兵隊』で爆発的な人気を誇った火野葦平、『生きてゐる兵 隊』で戦争の実態を描いて発禁をくらった石川達三、戦争の日常をニヒリスティックに描いた榊山潤などの、戦場から復員までの小説をたどって、「兵士であること」「一般人に戻ること」の実際と困難を根底から描きます。復員兵、傷痍軍人、戦争未亡人問題など、戦争は始めるのは簡単だが、終えるのは大変だということが痛感されます。戦争・戦場・銃後を初めてトータルに捉えた、気鋭の社会学者による力作「戦場論」です。
目次
戦場へ征く、戦場から還 目次
第Ⅰ部 方法
序 章 本書の問いとその背景
1 背景 十五年戦争の研究
2 問題設定
第1章 兵士たちのこと
1 戦場と戦争
2 軍隊と戦地――日常生活から切り離された空間として
3 帰還と銃後
4 軍隊の崩壊と復員
第Ⅱ部 戦場へ征く
第2章 戦場の小説へ
1 戦場の小説の出発点
2 日中戦争開始前
3 日中戦争とメディアの変化
4 文壇文学の社会化
5 戦場の小説へ
第3章 戦場と兵隊の小説
1 榊山潤
2 石川達三『生きてゐる兵隊』『武漢作戦』
3 火野葦平『土と兵隊』『麦と兵隊』
補論 兵営を描く――火野葦平『陸軍』と『青春の岐路』
1 『陸軍』
2 『青春の岐路』
3 補論のまとめ
第Ⅲ部 戦場から還る
第4章 帰還兵の時代――戦場から銃後へ
1 前提として
2 日中戦争期の帰還兵
3 帰還作家と書くことへの不安
4 榊山潤の活躍と傷痍軍人の小説
5 火野葦平――「英雄」の帰還と銃後の現実
6 帰還兵の時代と常識の揺らぎ――石川達三「俳優」と「感情架橋」
第5章 敗戦と復員
1 予備的考察
2 「悲しき兵隊」をめぐって
3 石川達三の「敗戦」と榊山潤の「終戦」
4 復員者たち
結 論
注
あとがき
基本文献一覧
関連年表
事項索引
人名・書名索引