紹介
アメリカ奴隷貿易禁止(1808)から200年
アメリカの人種の問題を理解するために——
1954年、人種別学を違憲とした「ブラウン判決」から半世紀を経てなお根深い人種の問題を抱えるアメリカ……
人種隔離の意識構造を暴くリリアン・E・スミスの世界。
「判決は決して早すぎることはなかった。一日たりとも待つべきものではなかった。世界中の目覚まし時計が鳴り響いていたのだ……今こそその時だ」
リリアン・E・スミスは人種別学を違憲とした「ブラウン判決」(1954)を高く評価し、アメリカ市民の啓発のために、翌年、『今こそその時』(NOW IS THE TIME) を出版した。スミスは人種差別を「人間の問題」ととらえ、人種主義は孤独な人間の不安、恐怖にあるとした。
本書では、『今こそその時』の翻訳とともに、人種差別の構造を見透かすスミスに今日的な意味を読み取り解説する——「『純血』の人種はいない。皮膚の色に対応する血液型などない。一つの人種——人類という種があるだけだ」
目次
第I部 [翻訳]『今こそその時』(リリアン・E・スミス著/廣瀬典生訳)
I 今こそその時
II 行動や言葉で示すべきこと
だれもが簡単にできる些細なこと
III 25の質問
質問と若干の短い回答
《文化》
《異人種間結婚と「血統」そして遺伝》
《変化と法律》
《神と聖書》
《経済》
《時間》
《事実に基づく論証》
《黒人が望んでいること》
《共産主義と皮膚の色》
《あなたが役に立つこと》
《隔離しても平等》
第II部 [考察]ポストコロニアリズムの時代におけるリリアン・E・スミスの再評価(廣瀬典生著)
序
▼人種隔離に対する闘いの歴史の今
▼「ブラウン判決」とリリアン・E・スミス
I
▼リリアン・E・スミスの視座
II
▼『夢を殺した人たち』——人種隔離の心理
III
▼『夢を殺した人たち』——南部の宗教と白人
▼怒りの神の脅威・重圧からの逃避
IV
▼『夢を殺した人たち』——スミスのプアホワイト分析(1)
V
▼『夢を殺した人たち』——スミスのプアホワイト分析(2)と後世のプアホワイト分析への援用
VI
▼『奇妙な果実』
Ⅶ
▼『一時間』
▼『旅』に表明されたスミスの未来志向の視座
Ⅷ
▼ジョージア州の2人の自由主義者、スミスとラルフ・マクギル
▼南部主義、オリエンタリズムそしてアフリカニズム——スミスのポストコロニアルな視座
IX
▼フォークナーとアグレリアンに対するスミスの批判的視座
▼ポストコロニアリストとしてのスミス評価の可能性
●リリアン・E・スミス略年表
●引用・参考文献
●ポーラ・スネリングによる図書リスト
●索引