紹介
この国の「活路」をどこに見出すか
戦後、驚異的な発展を遂げ、世界に冠たる経済大国にまでのし上がった日本の存在感に翳りが見えている。もう一度世界経済の中でプレゼンスを取り戻すには何が必要か。貿易理論とデータを駆使してわが国の比較優位の変遷と現状を解明し、今後の発展に向けての方向性を探る。
▼日本経済の本当の強みを解き明かす、昨年の日経経済図書文化賞受賞者の渾身の1冊!
HO(ヘクシャー=オリーン)モデルに再び刮目せよ!
わが国は国際貿易において、どこに比較優位があるのか。これまでの「お家芸」だった熟練労働集約財の生産と輸出の比較優位はこれからも維持し続けられるのか。ここ数十年の日本の傾向を分析する上で、伝統的なHOモデルが今なお有効であることを示し、要素コンテンツ・アプローチ、クロス・インダストリー分析、マルチ・コーン・モデルなどからこの国の現状と将来像を焙り出す、画期的研究の集大成!
目次
第1章 なぜいま比較優位か
1 比較優位とは
2 なぜ秘書室は必要か
3 貿易に注目する意義
4 比較優位に注目する意義
(1)産業(企業)の国際競争力と比較優位
(2)国力と比較優位
5 本書の位置づけ
(1)これまでの貿易理論の発展:四つの段階
(2)本書でヘクシャー=オーリン・モデルに注目する理由
6 本書の構成と範囲
7 補論 リカード・モデル
第Ⅰ部 わが国の貿易の変遷と比較優位
第2章 日本の国際貿易の変遷
1 過去30年を振り返る
2 データ:JIPデータベース
3 日本の貿易パターン:1980年から2009年まで
(1)主要な輸出入産業
(2)主要な貿易相手国
(3)後開発途上国からの輸入
4 諸外国との比較
5 データから明らかになった事実
第3章 比較優位は机上の空論か
1 日本の開国と比較優位
2 比較優位と貿易パターンの論理
(1)顕示選好の弱基準
(2)比較優位の法則
3 データ
4 明治初期の貿易パターンと比較優位
5 比較優位は机上の空論ではない
6 比較優位の法則:証明
第Ⅱ部 HO(ヘクシャー=オリーン)モデルと日本の貿易パターン
第4章 貿易と生産要素をつなぐメカニズム
1 貿易と資本、労働
(1)二要素モデル
(2)レオンティエフ・パラドックス
2 二要素モデルの拡張
(1)二要素から多要素へ
(2)貿易収支不均衡
3 クロス・カントリー分析への拡張
第5章 日本の純輸出は今なお熟練労働集約的か
1 分析のねらい
2 要素コンテンツ・アプローチ
(1)貿易の熟練労働・非熟練労働コンテンツ
(2)熟練・非熟練労働コンテンツの変化:要因分解
(3)データ
3 日本の貿易の要素コンテンツ
4 失われつつある熟練労働集約財の比較優位
5 補論A 記述統計
6 補論B 日本の貿易の資本・労働コンテンツ
第6章 日本の純輸出はエネルギー節約的か
1 貿易理論が予測する日本の貿易パターン
2 クロス・インダストリー分析
(1)分析手法
(2)データ
3 仮説の検証
4 変わりつつある貿易パターン
第Ⅲ部 拡張HO(ヘクシャー=オリーン)モデルによる日本の産業
構造分析
第7章 都道府県の産業構造と賃金格差
1 国際貿易理論の拡張
2 マルチ・コーン・モデル
3 実証分析の枠組み
(1)データ
(2)産業の異質性とデータの集計
(3)回帰式
4 二つの主張の現実妥当性
(1)ベースラインの結果
(2)人的資本蓄積の効果
(3)賃金を考慮しないケース
5 マルチ・コーン・モデルの有用性
6 補論A 回帰式の導出
7 補論B コブ=ダグラス型生産関数のケース
第8章 日本の要素賦存と産業構造の変遷
1 雁行形態的産業発展とは
2 雁行形態的産業発展とマルチ・コーン・モデル
3 データと回帰式
(1)データ
(2)産業の異質性とデータの集計
(3)回帰式
4 マルチ・コーン・モデルは日本の雁行形態的
産業発展を説明できるか
(1)ベースラインの結果
(2)生産性成長を考慮するケース
(3)人的資本蓄積の効果
(4)コーンの数の拡張
5 雁行形態的産業発展とヘクシャー=オーリン・モデル
第9章 日本の比較優位はどこにあるのか
1 本書のまとめ
2 比較優位から見た日本経済の課題
3 今後の研究の方向性
あとがき
初出一覧
参考文献
事項索引
人名索引