紹介
私には旅に出る理由がある
▼サファヴィー朝のシャー・アッバースの外交使節としてモスクワ、さらには白海を経由して中欧、イタリア、南仏を歴訪し、スペインのヴァリャドリードでシーア派からカトリックに改宗して「ペルシアのドン・フアン」となったウルチ・ベク――。
メッカ巡礼を中心に据えつつ三大陸を巡る前人未到の大旅行を達成し、広域に関する貴重情報を豊富に含む異色のリフラを残したイブン・バットゥータ――。
▼10世紀~17世紀。西アジアや北アフリカ、そしてヨーロッパを旅した人々は、その情景、自身の思索、異文化との接触交流をいかに記述したのか。
▼遺された多様な史料から、彼らを取り巻く世界や時代の刻印を読み解いてゆく。
目次
序 長谷部史彦
中近世イベリア半島における宗教的マイノリティーの移動
――ユダヤ人とコンベルソ、マラーノを中心に 関 哲行
17世紀モリスコの旅行記
――ハジャリーのイスラーム再確認の旅 佐藤健太郎
イタリア司教の目に映った15世紀のチェコ
――エネアのボヘミア・レポートとその背景 藤井 真生
学知の旅、写本の旅
――中世地中海世界における科学知の継受と伝播 岩波 敦子
『ローマの都の驚異』考
――「ガイドブック」あるいは政治的文書 神崎 忠昭
近世オスマン帝国の旅と旅人
――エヴリヤ・チェレビーを中心に 藤木 健二
イブン・バットゥータの旅行記におけるナイル・デルタ情報の虚実
長谷部史彦
14世紀~16世紀前半の聖地巡礼記に見る「聖墳墓の騎士」
――儀礼へのフランチェスコ会の関与過程を中心に 櫻井 康人
中世のメッカ巡礼と医療
――クスター・イブン・ルーカーの巡礼医学書の記述から
太田 啓子
ナーセル・ホスロウとその『旅行記』
――屋上に牛はいたのか 森本 一夫
地中海を旅した二人の改宗者
――イラン人カトリック信徒とアルメニア人シーア派ムスリム
守川 知子
インド洋船旅の風
――ポルトガル来航期におけるアラブの航海技術研究の一齣
栗山 保之
跋