紹介
「物語と、そして絵を読んで下さい」▼17世紀フランス古典主義の画家ニコラ・プッサンは、「絵画的比喩」を駆使し、絵画にあらゆる「意味」を託した。▼ニコラ・プッサンの魅力はどこにあるのだろうか——。「画家・哲学者」と称されたプッサンは「私は何ごともなおざりにしなかった」と明言し、生涯にわたり、カンヴァスの隅々にまで神経を行き届かせた物語画と「理想的風景画」を描き続けた。本書では、プッサンがローマにやって来てから、フランスの顧客に「物語を、そして絵を読んでください」と手紙を書いた1639年に至るまでの、およそ10年間に描いた数枚の絵画を取り上げる。リシュリュー枢機卿の依頼で描いた作品、友人画家に送った作品をつぶさに分析し、野心家プッサンのたくらみを明らかにする快著。カラー口絵8頁。
目次
序第1章 プッサンと古代美術 I はじめに II プッサンと古代美術の関係についての諸見解 III 「マルスとウェヌス」の図章伝統と寓意的意味 IV プッサン作《マルスとウェヌス》の図章分析 V プッサンの「絵画的比喩」と古代美術 VI 本章の結び第2章 作品生成の意味——《バッコスの勝利》と《パンの勝利》 I はじめに II 先行研究と問題の所在 III リシュリュー城「王の陳列室」の再構成と部屋の性格 IV マントヴァの作品入手と当初の装飾構想 V プッサン作《バッコスの勝利》の作品分析 VI プッサン作《パンの勝利》の作品分析 VII プッサンの作品とマントヴァの作品の形式的対応 VIII 「王の陳列室」内でのマントヴァの作品群 IX プッサンの作品とマントヴァの作品の対応が生み出す意味とその効果 X 本章の結び第3章 プッサンとフランス古典主義の形成 I はじめに II プッサン作《ネプトゥネスの勝利》作品分析 III 《連れ去られるリナルド》と《アイネイアスに武具を指し示すウェヌス》に見る古代美術とラファエッロの受容 IV 本章の結びおわりに注文献目録フランス語要旨と目次あとがき人名索引事項索引