紹介
アメリカ合衆国が建国されると、自分たちのつくりだした国がどんな国家なのかを提示するためにも、ナショナル・アイデンティティが新たに構築されなければならなかった。その構築のための視覚的な装置として、絵画や彫刻や建築は非常に重要な役割を果たした。こうしてアメリカ美術が生みだされ、その美術にアメリカ的な性格が求められ、さらには美術がアメリカ的な性格を広めるために機能してもいったのである。ヨーロッパとは異なるアメリカ的な美術とは何か、アメリカ的な表現とは何か。こうした問題が、独立以降には喫緊の課題として考えられ、画家や彫刻家たちは、これらの問題への答えを求めながら制作にはげみ、肖像画、風景画、歴史画といったさまざまなジャンルで、新たに形成されつつある社会とも手を組みながら「アメリカ的なもの」の創出を試みていったその過程を検証し、アメリカ美術の精華を探る!
目次
プロローグ アメリカ美術の曙 田中正之
第1章 描かれたアメリカ建国神話──国家理念の伝達装置としての歴史画 田中正之
第2章 肖像画における「アメリカ性」の創出──大統領の身体をめぐって 横山佐紀
第3章 死と再生、分裂から統合へ──南北戦争の表象とウィンスロー・ホーマー 小林剛
第4章 アメリカ風景画の発見とトーマス・コール 瀧井直子
第5章 一人称の都市風景──ジョージア・オキーフ、フリーダ・カーロ、フローリン・ステットハイマーの描いたアメリカ 江崎総子
エピローグ 神話化されたアメリカ 田中正之
註
あとがき
人名索引