目次
序 調査を通して、見えない女性たちの問題に光をあてる
第1部 非正規職シングル女性のライフヒストリー
①一般職社員から派遣に。コツコツと25年働いてきた 千羽瑠さん
②図書館司書として四つの図書館で働いてきた ゆかりさん
③請負で働きつつ「小さなサロンを持つのが夢」と話す あいこさん
④17歳のときからずっと働いてきて「納税オンリー」という 直子さん
⑤派遣という働き方を選び「プロ意識」を持ち働いてきた 敬子さん
第2部 非正規職シングル女性問題にかんする論考
1 統計からみた35~44歳の非正規雇用に就くシングル女性[小杉礼子]
はじめに
1 婚姻と就業の現状
2 35~44歳シングル女性の非正規雇用での働き方
3 まとめ
2 女性の非正規問題の新たな局面――貧困・孤立・未婚[野依智子]
はじめに
1 非正規シングル女性の生活・労働・社会関係
2 非正規雇用増加の背景
3 非正規シングルの貧困のメカニズム
おわりに
3 非正規職シングル女性の生活不満を緩和する労働の課題――「非正規職でも年収300万円以上」を[池田心豪]
はじめに
1 無配偶女性の非正規労働に関する先行研究
2 当事者の声から見える課題
3 非正規職シングル女性の生活満足度――データ分析
4 労働条件と生活の向上に向けて――結論と考察
4 メンタルヘルスの問題を中心に[高橋美保]
1 非正規職シングル女性にまつわるメンタルヘルスの問題の重要性
2 先行研究の概観
3 二つの調査結果を元にした非正規職シングル女性のメンタルヘルスの実態
4 総合考察
5 今後の課題
第3部 支援の現場から
対談 支援の対象になりづらい女性たちを、どう支援していくか[朝比奈ミカ×鈴木晶子]
相談支援につながりにくい女性たち
就労困難を抱える層への生活支援
増収から視点を変える
居場所を作る
支援現場の女性像と女性支援
同性パートナーとの同居
シングル女性の身の置きどころと縁
新たな仕事起こしへ
多様な次元のセーフティネットの必要性
非正規職シングル女性への支援と保障[鈴木晶子]
1 就労支援
2 生活支援と社会的負担
3 支援の求めにくさ
4 現状でも活用できる支援
5 結びに
第4部 調査の概要と結果について
「非正規職シングル女性の社会的支援に向けたニーズ調査」の概要と結果[植野ルナ]
はじめに
1 調査概要
2 調査結果
3 調査結果のまとめ
おわりに
ウェブアンケート調査票
前書きなど
序 調査を通して、見えない女性たちの問題に光をあてる
(…前略…)
本書が刊行されるきっかけとなった「非正規職シングル女性の社会的支援に向けたニーズ調査」は、2015年に公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が企画し、実施した(詳細は第4部を参照)。調査名に「非正規職シングル女性」と「職」を付けたのは、「非正規シングル女性」とすると女性本人を形容する語として「非正規」が付いてしまい、人間への否定的なニュアンスをもたれるのではないかと危惧したためであった。「非正規職」という職名は一般的ではないが、総称として表現することで、社会の問題であることを表そうとした。
当協会では1980年代から、横浜市で女性の就業支援に取り組んでいる。この間社会経済状況が激変していく中で、社会的経済的に困難な状況にある女性たちに役立つ支援をと考え、対象層を広げてきた。シングルマザーや、近年では若年無業女性への就業等支援事業も行っている。
しかし、2000年代に入って、働く女性の過半数は非正規雇用となり、2016年の労働力調査では55・9%である。シングルで働き続ける女性も増えた。彼女たちには支援が届いていないばかりか見えない存在となり、貧困に陥りやすい層となっているのではないか。とりわけ1993年以降の就職氷河期に就職活動をした女性たちは初職から不安定な状況に置かれてきたのではないか。これらは個人の問題ではなく、社会的な問題として支援策が検討されるべきではないのか。そのような問題意識をもって、「非正規雇用で働くシングルの(子のいない)35歳から54歳の女性」を対象として、しごとと暮らしの状況、悩みや不安、望むサポートについて詳細に聞いたのが本調査である。
(…後略…)