目次
図表一覧
略語一覧
はじめに アメリカの時代到来
1 覇者交替の歴史
2 現代世界の主役
第Ⅰ部 戦乱の時代――二つの世界大戦[~一九四五年]
第1章 現代世界の夜明け[~一九一四年]
1 世界的大国に成長
2 波高き太平洋
3 社会主義国家の胎動
4 自滅に向かう欧州の支配
第2章 第一次世界大戦[一九一四年~一九一九年]
1 連合国の勝利に貢献
2 めざすはアメリカ式平和
3 米ソ対立の原点
4 民族主義の力と限界
第3章 ヴェルサイユ体制[一九一九年~一九二九年]
1 新たな平和の構図
2 二十年の休戦
3 国際主義の道半ば
4 新たな敵
第4章 破綻した秩序[一九二九年~一九三九年]
1 世界恐慌
2 市場確保を最優先
3 欧州に出現した脅威
4 アジアに出現した脅威
第5章 第二次世界大戦[一九三九年~一九四五年]
1 民主主義の守護神
2 ファシズム打倒に貢献
3 戦後秩序形成をめぐる確執
4 新兵器に膨らむ期待
第Ⅱ部 危機の時代――冷戦の勃発と激化[一九四五年~一九六三年]
第6章 冷戦の始まり[一九四五年~一九四九年]
1 失速した米ソ協力
2 欧州冷戦の発火
3 分断が決定的に
4 発展途上世界での火花
第7章 アジアの熱戦[一九四九年~一九五三年]
1 睨み合う米中
2 朝鮮戦争
3 共産主義一枚岩神話の裏側
4 変身する旧敵国
第8章 平和共存の風[一九五三年~一九五七年]
1 疑心暗鬼の握手
2 ニュー・ルック戦略
3 大西洋に深まる溝
4 揺らぐ社会主義陣営
第9章 対決再び[一九五七年~一九六〇年]
1 高空からの警鐘
2 革命の炎
3 西側同盟内に亀裂
4 同病相憐れむソ連
第10章 核破滅の淵に立って[一九六〇年~一九六三年]
1 危機再燃
2 米ソの論理に挑戦
3 騒擾の処方箋
4 キューバ危機
第Ⅲ部 協調の時代――収束に向かう冷戦[一九六三年~一九九〇年]
第11章 和解と泥沼[一九六三年~一九六八年]
1 引き継がれる米ソ世界管理
2 多極化も進行
3 ヴェトナム戦争
4 宗教と民族
第12章 デタント[一九六八年~一九七三年]
1 泥沼からの離脱
2 あいつぐ東西の合意
3 米中ソ三極体制へ
4 地球を二分する線
第13章 暗雲の気配[一九七三年~一九七九年]
1 中東の動乱
2 アジアの赤き潮流
3 綻び見せるデタント
4 米ソの苦悶
第14章 地域紛争が頻発[一九七九年~一九八五年]
1 ソ連の躓き
2 強いアメリカ
3 覆い隠せぬ脆さ
4 冷戦の枠を越えた紛争
第15章 冷戦の終わり[一九八五年~一九九〇年]
1 起死回生の一策
2 欧州を直撃
3 半世紀ぶりの和解
4 膨らむ希望の光
第Ⅳ部 混沌の時代――分極化する世界[一九九〇年~]
第16章 試される新秩序[一九九〇年~一九九三年]
1 湾岸戦争
2 失われた協力者
3 人道と人権
4 新欧州の明暗
第17章 統合と放散[一九九三年~二〇〇一年]
1 平和と紛争の大陸
2 地域統合と軍縮
3 燃え続ける中東とアジア
4 冷戦後の米中ソ
第18章 テロとの戦い[二〇〇一年~]
1 再び奮い立った巨人
2 大義なき戦争のつけ
3 吹き荒れる嵐
4 アメリカの無力をよそに
おわりに アメリカの世紀への挑戦者
1 難敵また難敵
2 厄介な友邦たち
3 足下に抱える不安
あとがき
参考文献
索引
前書きなど
あとがき
アメリカ外交史を学ぶ者にとって、一九三〇年代、一九六〇年代といった十年単位のくくりは、なじみ深い歴史叙述の形式である。そこで、自分が大学で担当している授業も同じ考え方で展開できないか。十年ごとに十週、あるいは十年分に二回の授業を充てるとして二十週。それで二十世紀つまり現代の国際関係史を描き切ることはできないか。そう思いついたことが本書の始まりである。
ところがその作業を始めて、あらためて痛感させられたことがある。歴史を十年単位で区切ることが有意義な場合ばかりではないというしごく単純な、当たり前といえば当たり前の事実である。一九五九年と一九六〇年、一九六九年と一九七〇年を、単純に別のものと扱ってよいものか。逆に、第一次世界大戦勃発(一九一四年)や第二次世界大戦終結(一九四五年)など、十年代のほぼ半ばに位置するけれども時代を画すといってよい年があるのではないか。わが国であれば西暦より昭和四十年代とか五十年代とかいった区分のほうがふさわしくないか。それ以前に、西暦を用いるにせよ元号を用いるにせよ、十年という時間の中で起きた出来事にかなりの濃淡があるのではないか。試行錯誤と悪戦苦闘の結果が第1~18章と第Ⅰ~Ⅳ部の区切りである。
本書が目的とするところはいくつかある。第一に、現代史を数年ないし十数年ごとにいわば輪切りにしたうえで、それぞれがどのような時代だったかを明らかにすること。第二に、現代国際関係の全体像を起‐承‐転‐結の流れとして俯瞰すること。第三に、アメリカを頂点とする国際秩序の形成とそれに対する絶え間ない挑戦を軸に、この百年あまりを把握すること。
いささか、いや正直なところをいえばかなり欲張った望みである。だが、昨年早々に予期せぬ入院・手術を経験したこともあって、自分自身が生きてきた世界の歩みやそれをもたらした潮流などを
描き直してみたいという欲求が強まった。当初の意図どおり、本書がそれぞれの時代を明瞭に描き、戦乱‐対立‐協調‐混沌という現代世界の道程を着実に追い、パックス・アメリカーナの光と影を浮き彫りにしたかは、ただ読者の判断に待つ以外にない。
本書刊行にあたっては、明石書店の大江道雅氏、岡留洋文氏にひとかたならぬお世話になった。大江氏からはこの課題への取り組み方や内容などについてさまざまなご助言を、岡留氏からは懇切丁寧な編集作業によるご支援をいただいた。ここに記して謝意を表したい。
二〇一六年三月 松岡 完