目次
序文
第1部 民族の時代(1814~1914年)
第1章 諸侯のヨーロッパから諸国民のヨーロッパへ?――民族運動と自由主義運動(1814~1852年)
第2章 民族意識の高揚から戦争へ――フランスとドイツ(1850 ~1870/1871年)
第3章 フランスとドイツの政治的発展(1870~1914年)
第4章 ドイツとフランス――19世紀の難題への二つの回答
第2部 19世紀および20世紀初頭における産業社会の形成
第5章 経済発展(1780~1939年)
第6章 連続性と変化の狭間の社会(1815~1939年)
第3部 19世紀および20世紀前半における文化の発展
第7章 芸術家たちの表現と社会参加の新しい形(1815~1939年)
第8章 大衆文化の時代
第4部 ヨーロッパの拡大と植民地主義
第9章 植民地主義の時代におけるヨーロッパと世界(19世紀中頃から1914年まで)
第10章 植民地支配
第5部 第一次世界大戦
第11章 1914~1918年:ヨーロッパ戦争から世界戦争へ
第12章 戦争を終わらせる?
第6部 戦間期における民主主義と全体主義体制
第13章 立憲民主制国家の危機(1918~1939年)
第14章 ナチス支配下のドイツ(1933~1939年)
第15章 ボリシェヴィズムのロシアからスターリン体制へ(1921~1941年)
第7部 第二次世界大戦
第16章 第二次世界大戦(1939~1945年)の時期区分
第17章 ドイツ支配下のヨーロッパ
第18章 第二次世界大戦(1939~1945年)中のフランス
第19章 ヨーロッパとその諸民族:対立と挑戦(1815~1945年)
監訳者解説 国境を越える教科書時代の幕開け?[近藤孝弘]
監訳者あとがき 和解と協調への揺るぎない姿勢を讃えつつ[福井憲彦]
前書きなど
序文
本書は、ギムナジウム上級段階ないしリセに通うドイツとフランスの生徒たちのために作られた二つの国に共通する初の歴史教科書シリーズの第2巻である。
既刊の1945年以降を扱う第1巻に続いて、この巻は1815年から1945年までを対象とし、これはフランスではリセの第1学年(2年生)、ドイツではギムナジウムの第11ないし12年生の学習を想定している。
この壮大な企画は、ドイツ連邦共和国とフランス共和国の間で交わされたエリゼ条約調印40周年記念事業の一環として2003年1月23日にベルリンで開催された独仏青少年議会に端を発している。そこに参加した高校生は、「知識の不足によって引き起こされる偏見をなくすため、同じ内容を持つ歴史教科書を両国に導入する」ことを求めたのだった。
本書の構想、内容、レイアウトは既刊の第1巻と同じ考え方に基づいている。第2巻もまた、編者、著者、クレット社とナタン社の担当者のほか、本プロジェクトの概要を定めたプロジェクト・グループの責任者が力を結集した結果である。さらに第1巻と同様、第2巻も三つのグループ、すなわち研究者、教員、出版社の協力という要求に応えるものとなっている。そのほか歴史記述では、事実だけでなくその解釈まで十分に取り上げることでもたらされる様々な問いにも答えたいと考えている。以上を基本姿勢として、本書は国家的な観点をきっぱりと払拭し、ドイツとフランスの歴史的展開に見られる共通性・類似性と差異、そして相互作用に注目し、それらをまずはヨーロッパ内で、さらには、ますます増大していく地球規模のつながりの中で捉えようとするものである。
本教科書は生徒諸君にとって、複雑な世界を理解するための手がかりを得るチャンスともなるものである。独仏共通歴史教科書は、ライン川両岸の同じ学年の教育課程基準に対応しているだけでなく、以下の三つの付加価値を有している。第一に独仏共通歴史教科書はそのドイツ版もフランス版も、通常の歴史や外国語の授業のほか、アビバック・コースのようなバイリンガル・クラスでも使うことができる。第二の付加価値は、資料や教育方法上の根本的な革新に体現されており、それは使用されている地図、写真、ポスター、カリカチュア、統計、図表、翻訳されたテキスト、学習方法のページなどに見てとることができる。教員の皆様、生徒諸君、また学校外で本書に関心を寄せられる方々は、他者と自分自身に対する視点を変える新しい素材を必ずやこの中に見出されるであろう。そして最後の付加価値は、提供されているものの見方の革新性ならびにその特殊性にある。その主たる特徴は視点の転換であり、それは、歴史の流れの絡み合いや、共通の記憶と対立する記憶、そして一つの現実に対する多様で様々に異なる理解の仕方、言い換えれば言葉や意味、観念そしてその受け止め方における差異を強調する。
この巻はナポレオン時代末期から第二次世界大戦終結までの時代を扱い、ドイツとフランスの各々の歴史の特徴を明らかにしている。この対立と戦争の1世紀半、しかしまた大規模な交流と協力の1世紀半でもあるこの時代を経て、両国はヨーロッパの建設に決定的な貢献をなすに到った。その歴史はいまも私たちの眼前で進行中である。独仏共通歴史教科書第2巻は、過去と現在を結びつけるこの野心的な試みを念頭において読み、また使用するに値するものである。
独仏共通歴史教科書プロジェクト・グループ