目次
はじめに
構成と特徴
Ⅰ 国家の形成
01 東アジアの自然環境と生業
02 先史文化の展開
03 国家の成立と発展
・写真探訪 東アジアの世界自然遺産
・大単元まとめ
Ⅱ 東アジア世界の成立
01 人口の移動と戦争
02 国際関係と外交活動
03 律令と儒教に基づいた統治体制
04 仏教の伝播と土着化
・大単元まとめ
Ⅲ 国際関係の変化と支配層の再編
01 遊牧民族の成長と国際関係の多元化
02 士大夫と武士
03 性理学の成立と広がり
04 交流の活性化と国際秩序の変化
・大単元まとめ
Ⅳ 東アジア社会の持続と変化
01 17世紀前後の東アジアの戦争
02 16~19世紀の社会変動
03 学問と科学技術、庶民文化
04 交易関係の変化と銀の流通
・写真探訪 東アジアの世界文化遺産
・大単元まとめ
Ⅴ 近代国家樹立への模索
01 近代化運動と国際関係の変動
02 帝国主義の侵略と民族運動
03 侵略戦争の拡大と国際連帯
04 西欧文物の受け入れ
・写真探訪 東アジアの近代建築物
・大単元まとめ
Ⅵ 今日の東アジア
01 戦後処理と東アジアの冷戦
02 経済成長と交易の活性化
03 政治と社会の発展
04 東アジアの摩擦と和解
・写真探訪 現代東アジアの10大ニュース
・大単元まとめ
付録
歴史年表
索引
参考文献
写真出典
訳注
訳者あとがき
前書きなど
東アジア史を学びながら
東アジア史は遺物・遺跡や文献から、東アジアの人々の過去のようすを再構成してみる科目です。それを通じて今日の東アジア社会を理解し、進んでいくべき方向を模索しようというものです。
東アジアの多くの民族は、先史時代からともに生活してきました。小さな地域単位で活発に交流し、ときには遠い地域まで人口が大規模に移動したりしました。国家間には激しい戦争が繰り広げられることもあり、一つの国が他の国を植民地として支配することもありました。
歴史的に東アジアは他の世界とは区別される文化圏を形づくりました。近代以前に漢字をともに使用し、仏教や儒学を宗教や政治理念としたのがいい例です。もちろん経済的にも多くの地域が緊密に関連していました。東アジア特有のこのような歴史と文化を理解することが、東アジア史を学ぶ目標の一つです。
一方、東アジア各地域の人々は自分たちだけの独特な生活様式を創造し、発展させてきました。遊牧地域もあれば、農耕地域もありました。農業地帯でも、稲作を主にする地域と畑作を主にする地域の違いがありました。科挙を通じて官職についた士大夫が政治と社会を主導する地域があるかと思えば、同じ時代に武人勢力が政権を掌握した地域もありました。このような地域間の違いを理解することも東アジア史を学ぶ目標です。
近代に差し掛かると西欧勢力が東アジアの一部の地域を植民地とし、東アジアの国家の中では最も早く国民国家を樹立した日本がその後に続きました。すると帝国主義に反対する民族運動が活発に起こり、彼らの間に民族や国家を超越した連帯も構成されました。アジア太平洋戦争が終わると植民地は開放されましたが、やがて始まった冷戦の渦中で東アジア世界は再び熱戦に包まれました。東アジア国家に共通するこのような経験を理解することもまた、東アジア史を学ぶ目標です。
東アジア史は世界史の一部ですが、韓国史を含む歴史です。また、国や民族ではなく地域世界を単位とした歴史であるという点に特色があります。したがって東アジア史を勉強すれば、私たちの過去や現在のようすをより広い視野から客観的に見ることができるでしょう。同時に隣国の人々を理解し、私たちの未来構想の中に彼らをともに置くことも可能となるでしょう。
すべての歴史は現在の歴史であり、歴史は未来のために貢献しなければならないという言葉があります。そうであるならば、私たちの現在はどうでしょう。現在東アジア諸国の関係は、日増しに緊密になっています。相互依存性が高まるにつれ、東アジア共同体を模索する動きも出てきています。しかし東アジアの国家間には領土をめぐる紛争、歴史摩擦、体制間の対立など解決しなければならない多くの問題があります。東アジア史を通じてこれらの課題を解決し、望ましい東アジアの未来を設計できたらと思います。
国家や民族という枠を抜け出し、自分と他人を区別していた視角からもう一歩踏み出し、地域世界という広い世界の中でわが国について考えてみることを勧めます。