目次
日本語版刊行にむけて Preface to the Japanese Edition アンドリュー・サリヴァン
はじめに Preface
プロローグ Prologue
同性愛者とは何か What Is a Homosexual?
第1章 同性愛禁止論者 The Prohibitionists
第2章 性解放主義者 The Liberationists
第3章 保守派 The Conservatives
第4章 リベラル派 The Liberals
第5章 同性愛の政治学 A Politics of Homosexuality
エピローグ Epilogue
同性愛者の役割 What Are Homosexuals For?
おわりに Afterword
主要な参考文献 Select Bibliography
謝辞 Acknowledgments
監訳者あとがき Translator's Afterword 本山哲人
日本における同性愛者の法的、社会的現状 The Legal and Social Status of Homosexuals in Japan Today 山下敏雅
前書きなど
おわりに Afterword
(…前略…)
公的な議論を検証している第1章から第5章も、それぞれ若干異なった論調で書かれている。最初の四章は、友人であるロイ・ツァオ氏が言うところの「内在批評」という形を取っている。同性愛に関する論争を展開している四つの立場を、それぞれの視点から論じようとした。検証するためにそれぞれの立場が前提としている事柄を受け入れた上で、内在する矛盾点を明らかにしようとした。そういう意図があったので、章と章の間に矛盾点があることを指摘した批評は、本書のそもそもの狙いを誤解していたのではないかと思えてしまう。第1章で前提となっていることと、第2章あるいは第4章の前提とは違う。各章で取り上げているフーコー、アクィナス、ミル、バークは、それぞれ違った前提を基に議論を展開している。だから、各章、全く違った表現で議論を展開している。それぞれの議論を行う者が用いる言葉遣いや口調で表現し、彼らの声と直接対話することを心がけた。したがって、各章は首尾一貫した大論の一部ではなく、一種の論理的共感をそれぞれ個別に生む試みと捉えて読むべきものである。各論を単に論駁するのではなく、それぞれと対話という形で議論を展開するように心掛けた。対話を通して学ぶものがあることを期待した。この「対話」は、そもそも結論ありきの「対話」で、この共感というのは欺瞞であるとの批判もあるだろう。これに対しては、真剣に対話をしたと主張する以外、反論はできない。論理的検証というのは、批判するだけでなく、耳を傾け、ときには真似てみることである。だからこそ、それぞれの議論に耳を傾けることを心掛けた。そして、そうすることで、それぞれの議論において様々な問題点を検証していくことになった。
本格的な批判は、第5章で展開した。第1章から第4章までの論調と、この章の論調は全く違う。第5章は、明らかに私自身の声で書かれており、私の政治的な考えをここで初めて提示した。したがって、第1章で全面的に用いた自然法の論理は、第5章では姿を消している。第4章で扱った文化的論理は、第5章では影を潜めている。それは、第5章が、第4章までに検証した諸々の思考法から切り離されて存在しているからである。ただ、第5章は、一個人ではなく、一般市民の視点で書かれている。そのため、本書の政治的な議論の核をなしている。
(…後略…)