目次
はじめに
第3版の出版にあたって
Ⅰ 先住アメリカ人の世界
第1章 最古のアメリカ人――モンゴロイドのアジアからの移動
第2章 先住アメリカ人の文化――その地域的広がりと多様性
第3章 一四九二年の先住民人口――異なる推定値が意味するもの
Ⅱ 先住アメリカ人・ヨーロッパ人・アフリカ人
第4章 ヨーロッパ人の植民活動――それは大西洋岸からのみ始められたのか
第5章 ヴァージニア植民地の建設――先住民インディアン側から見ると
第6章 ニューイングランド植民地の建設――「友好」の神話
第7章 ベーコンの反乱とインディアン奴隷制――赤人と白人と黒人
第8章 黒人奴隷制と奴隷貿易――北米のアフリカン・ディアスポラ
第9章 神聖な実験――ウィリアム・ペンの先住民友好政策
第10章 大いなる覚醒――アメリカ最初の信仰復興運動
第11章 イギリス重商主義体制――「中核」と「周辺」構造の形成
第12章 イギリス帝国のための戦争――近代世界システムにおける覇権闘争
Ⅲ 解放と抑圧の連鎖
第13章 対英抵抗運動の展開――エリートと民衆の「自由」への目覚め
第14章 アメリカ独立革命――解放と抑圧の戦い
第15章 新しい国づくり――国家連合から国民国家へ
第16章 領土膨張の仕掛け――公有地条令と北西部領地条令
第17章 アメリカの二つの未来像――リパブリカンとフェデラリスト
第18章 一八一二年戦争――誰と誰の、何のための戦争であったのか
第19章 市場革命――アメリカ的工業化
第20章 セクションの対立――孤立する南部の反撃
第21章 モンロー宣言――J・Q・アダムズの「保守的」現実主義外交
第22章 インディアン強制移住――不実な「父親」、抗う「子どもたち」
第23章 綿花王国――プランター層の支配するピラミッド型社会
第24章 奴隷制廃止運動――漸進主義から即時解放主義へ
第25章 アメリカの知的独立――エマソンの知的独立宣言から大衆文化まで
第26章 セネカフォールズ――女性の権利宣言大会
第27章 マニフェスト・デスティニー――誰の、どんな運命が明白であったのか
第28章 ペリー艦隊の日本遠征――鯨が開いた鎖国の扉
第29章 南北対立の激化――奴隷制の西方への拡大をめぐって
第30章 南北戦争――戦争による変化と民衆生活
第31章 南部の再建――解放黒人の処遇と南部反乱州の連邦復帰
第32章 西部の開拓――フロンティアの前進とインディアンの抵抗
第33章 工業の発展と巨大企業の出現――「世界の工場」の座へ
第34章 労働運動・農民運動・人民党――自由労働イデオロギーの終焉
第35章 インディアンの隔離と同化――「インディアン」は殺せ、「人間」は救え
第36章 黒人の隔離と抵抗――「どん底時代」の黒人指導者たち
Ⅳ 「アメリカの世紀」
第37章 米西戦争――民族解放戦争と帝国主義戦争との交錯
第38章 ハワイ併合――無視された先住ハワイ人の声
第39章 帝国主義時代の到来とアメリカ――ふみにじられたマイノリティの声
第40章 新移民の流入と排斥――ネイティヴィズムと移民法の整備
第41章 「革新主義」の展開――巨大企業支配と改革政治
第42章 第一次世界大戦とアメリカ――新しい「ヘゲモニー」への道
第43章 大衆消費社会の出現――際限のないファッション・ショーの世界
第44章 大恐慌とニューディール――“バブル”崩壊から未曾有の社会的危機へ
第45章 第二次世界大戦とアメリカ――民主主義陣営の中軸として
第46章 原爆投下問題――投下は不可避だったのか
第47章 トルーマン・ドクトリンと冷戦の開始――米ソ対立と局地紛争
第48章 アイゼンハワー政権の外交――マッカーシズムから軍事超大国へ
第49章 「豊かな社会」――その光と影
第50章 黒人解放運動の系譜――キング牧師登場の背景
第51章 ケネディの登場――アメリカの若さと自信の光陰
第52章 ヴェトナム戦争とアメリカ――アメリカの最も長い戦争
第53章 激動の一九六〇年代――それは黒人学生の「座り込み」から始まった
第54章 ニュー・フェミニズム運動――「個人的なことは政治的なことだ」
第55章 カウンター・カルチャー・ムーブメント――「三〇歳以上の大人を信用するな」
第56章 ウォーターゲート事件――苦悩するアメリカ
第57章 アメリカとカリブ海・中南米――屈折した近隣関係史
第58章 アメリカとアラブ世界――メイド・イン・USAの中東和平
第59章 アメリカとアジア――太平洋を「アメリカの湖」に
第60章 変わりゆくアメリカ――多文化社会に向けて
Ⅴ 21世紀のアメリカ
第61章 テロとの戦い――W・ブッシュ政権の外交
第62章 「アメリカの世紀」の終わり――アメリカに映し出される資本主義の栄光と悲惨
第63章 バラク・オバマの登場――多様化するアメリカを象徴する初の非白人政権
参考文献
アメリカ史年表
前書きなど
はじめに(初版)
本書では、アメリカ史を理解する上で鍵となるような事象を、ほぼ時代順に六〇章に分けて取り上げ、それぞれについて現在第一線で活躍中の研究者が最新の研究成果を踏まえて自由に、ただし極めて限られたスペースのなかで解説するというスタイルがとられている。したがって、各章で取り扱われるトピックも、取り扱う角度も、各執筆者の自由に委ねられているため、それぞれ個性的であり多様であって、一定の史観に基づいた通史とはなっていない。
しかし、各執筆者の間には、これまでのアメリカ史の叙述が、しばしば白人男性中心の視点に偏っていたこと、そのためアメリカ史を担ってきた少数民族集団や社会集団の人びとが果たしてきた主体的役割が軽視されたり切り捨てられたりしてきたこと、したがってこれらの諸集団の役割と相互の諸関係を見直すとともに、世界史との関連のなかでアメリカ史を位置づけ、その全体像を構築する必要があること、これらの点では共通の認識があるといえよう。一見章ごとにバラバラに見えるかもしれないが、本書はそのような全体像構築に向けての一作業ということができよう。
各章で扱われる問題の大きさに比べて、割り当てられたスペースは極めて小さく、説明の筆が十分に及ばない面もあると思われる。その点は、各章末と巻末にあげた若干の参考文献で補っていただければ幸いである。
なお、各章の文責は章末に名を付した執筆者にある。編者は各章のトピックの設定と、用語の統一に責任を負っている。
二〇〇〇年秋 富田虎男・鵜月裕典・佐藤円
第3版の出版にあたって
初版が出版されてから一四年余りを経て、世界の情勢はアメリカを含めて大きく変わりつつある。そこで本書では、二〇〇八年に第2版として、初版のⅠ~Ⅳ部60章に加えてⅤ部「21世紀のアメリカ」を設け、第61章「テロとの戦い」第62章「『アメリカの世紀』の終わり」の二章を増補したが、このたび、その後の変化を反映させるべく、さらに第63章「バラク・オバマの登場」を増補し、必要に応じて旧版に改訂を加えた。
二〇一五年春