目次
はしがき
Ⅰ 地理・歴史
第1章 東南アジアの自然環境と人々――多様な自然の成り立ち
第2章 歴史の流れを概観してみよう――東南アジア史の構造
第3章 東南アジア考古学を“考古学”する――考古学の成立と東南アジア
第4章 インド化――東南アジアの古代史
第5章 交易の時代の東南アジア――上座仏教・イスラーム・カトリック
第6章 恣意的な分割――東南アジアの植民地化
第7章 脱植民地化から国民国家形成へ――東南アジアのナショナリズム
Ⅱ 政治、経済、国際関係
第8章 ベトナム戦争とその後の社会主義経済体制――戦場から市場へ
第9章 戦後東南アジアの政治経済――政治経済体制の自立と地域連合
第10章 東南アジア諸国連合.アセアン.とは何か?――世界のなかのアセアンを考える
第11章 東南アジア経済のダイナミズム――経済成長の光と影
第12章 東南アジア諸国の政治体制――民主化の行方
第13章 東南アジアの対外関係――大国のはざまで
Ⅲ 環境と暮らし
第14章 東南アジアの居住空間――都市と農村
第15章 東南アジアの主食コメは今?――食糧自給と不安定化する世界食糧貿易
第16章 作物をつくる――東南アジアの生業活動
Ⅳ 宗教・社会
第17章 東南アジアの宗教――多様な宗教
第18章 世界宗教の地域性――東南アジアのイスラーム
第19章 出家と在家――東南アジアの上座仏教
第20章 親族・家族論からみる東南アジア社会――親族・家族・ジェンダー
Ⅴ 文学・表象文化
第21章 ラーマーヤナの変容――東南アジアの古典文学
第22章 翻訳からの出発――東南アジアの近代文学
第23章 文学を通して広がる世界――東南アジアの現代文学
【コラム1】プラムディヤ・アナンタ・トゥール
第24章 映画館へ行こう――東南アジアの映画事情
【コラム2】タイの文化人
【コラム3】リティ・パニュ
第25章 フィリピンの民族舞踊――東南アジアの舞踊
【コラム4】フィリピンのスーパースター
【コラム5】チン・コン・ソンの反戦歌
第26章 自分探しから現代アートへ――東南アジアの近現代美術
Ⅵ 言語
第27章 東南アジアの文字――歴史と文化を映しだす鏡
第28章 東南アジア大陸部の言語――多種多様な言語のるつぼ
第29章 東南アジア島嶼部の言語――多様な言語状況の一端に触れてみよう
第30章 東南アジアの言語政策――ことばは多様な民族をまとめられるか?
Ⅶ 歴史・文化遺産
第31章 ボロブドゥール――荘厳な仏教百科事典
第32章 マラッカとジョージタウン――東西貿易が生み出した多文化共生都市
第33章 ライス・テラス――世界遺産のイフガオ棚田村の話
第34章 スコータイ――タイ人がつくった最初の国
第35章 ルアンパバーン――悠久の美と静寂の古都
第36章 フエ――清流と王宮文化の都
第37章 アンコール遺跡群――東南アジア最大の文化遺産
第38章 パガン――今も活き続ける仏教の聖地
Ⅷ 対日関係
第39章 帝国日本と「南洋」の日本人――近代日本の東南アジアとの関わり
第40章 「大東亜共栄圏」の名の下に――アジア・太平洋戦争期の東南アジア
第41章 地域の安定と繁栄を目指して――戦後日本の対東南アジア外交
第42章 ポピュラー・カルチャーをめぐる日本と東南アジア――タイにおける日本漫画、ドラマ、ファッションを中心に
Ⅸ 人物で語る現代史
第43章 スカルノとスハルト――独立の父と開発の父
第44章 マハティールとリー・クアンユー――開発の時代を率いた二人の政治家
第45章 コラソン・アキノ――フィリピン民主化のアイコン
第46章 タクシン・チナワット――評価の分かれる元首相
第47章 カイソーン・ポムウィハーン――ラオス革命の父
第48章 ホー・チ・ミン――ベトナム建国の父、統合の象徴
第49章 ポル・ポトとシハヌーク――愛国者が夢見た理想郷
第50章 ネーウィン――忘れ去られた「ビルマ現代史の主役」
各国概要
・インドネシア
・マレーシア
・フィリピン
・シンガポール
・タイ
・ラオス
・ベトナム
・カンボジア
・ミャンマー
参考文献
前書きなど
はしがき
明石書店から出版されている「エリア・スタディーズ」シリーズの一環として『東南アジアを知るための50章』をこのたび東京外国語大学東南アジア課程編で上梓する運びとなりました。従来、「エリア・スタディーズ」シリーズは各国ごとに編まれていることが多かったのに対し、本書は東南アジアという地域を対象としている点がこれまでにあまりなかった目新しい点だといえます。2015年に東南アジア諸国連合(アセアン)共同体発足を控え、東南アジアの特定の一国だけでなく、広く東南アジア地域全体に関心をもち、東南アジアを俯瞰してみたいという読者のみなさんのご要望に本書が少しでも応えることができればと願っています。
(…中略…)
本書の内容は、東京外国語大学東南アジア課程(インドネシア語、マレーシア語、フィリピン語、タイ語、ビルマ語、ラオス語、カンボジア語、ベトナム語の8言語)が毎年1年生向けに開講している授業「東南アジア地域基礎Ⅰ」がベースとなっています。この授業では東南アジア課程の専任教員が全員で分担してあたり、授業構成を教員間で十分に協議し、個別の国ごとの単なる知識の集積の授業ではなく、地理、歴史、宗教、社会、政治、経済、文学、言語などの各分野からの切り口で東南アジアを全体的に把握することを目指しています。この授業の内容がそのまま本書に反映されているというわけではありませんが、この教育実践がなかったならば、本書は誕生していなかったともいえます。
本書の内容は、東南アジアに関心をもち、これから東南アジアのことを学んでいこうとする人たちに対して、基礎的な知識と見方を提供するものであって、いわゆる学術書とは少し趣を異にします。本書の構成は東南アジア課程の教員で話し合って決めましたが、それぞれの章・コラムの内容については個々の執筆者が責任を負っています。本書の特徴は、東南アジアの知識について各分野でバランスよく提供している点にあります。なかでも第Ⅴ部の文学・表象文化、第Ⅵ部の言語、コラム「文化人」は本書ならではのものと自負しています。本書を手にとって一読していただき、東南アジアへの関心を深めていただければ、執筆者一同、これに勝る喜びはありません。
末筆ではありますが、本書の最初の企画案を出し、われわれ東南アジア課程の教員たちと本書の構成について話し合ってくださった元明石書店編集部の大槻武志さん、それから大槻さんの後をついで、なかなか集まらない原稿を辛抱強く待ち最後まで付き合っていただいた佐藤和久さんに心からお礼を申し上げたいと思います。また執筆者の同僚・元同僚の皆さん、とりわけ原稿の取りまとめや表記の統一などにご尽力いただいた小川英文さん、菊池陽子さんにも深謝いたします。
2014年3月 編集代表:今井昭夫