目次
一 津波の丘
二 教室の夜
三 ロクさんの白い歯
四 支援があるからこそ
五 “すべて受け入れる”
六 またきてね!
七 みなみちゃんの新しい宝物
八 力を、合わせる
九 心は流されない
十 がんばっぺ!
十一 それでもあきらめない
十二 “もはやくるって、ゆってだっちゃ!”
十三 おどろきのクリスマスプレゼント
十四 ヒートアップ
十五 共同食堂という“乗りもの”
十六 カフェの見える丘
前書きなど
一 津波の丘
翌日、みなみちゃんは丘のはしっこに出てきた。
そこは、いつもの小学校の丘だ。見わたすかぎりガレキを積んだようになっている。町はこなごなになった。気持ちはザワザワして心の中もガレキだらけの気がする。
遠くの海は、いろいろなもので濁ってみえた。
「町はおわりだあ」
おばあちゃんの言葉が耳に残る。
三方を山に囲まれた田舎町は、太平洋に面してさして広くもない平野にある。ガレキの中に町立病院だけが島のようにとりのこされていた。
家はまるでない、店も郵便局もない。変電所さえ動かなくなった。飲み水をつくる浄水場もこわれた。電柱と信号もたおれて、ぜんぶがガレキになった。
ふつうに使えていたもの、電気と水道。
何も、使えなくなった。
昨日の午後二時四十六分、宮城県の三陸沿岸をおそう地震があったのだ。その地震は東北地方全体をゆさぶり、関東はおろか遠く九州の鹿児島までゆれた。
(つづく)