目次
中国の指導者と外交責任者
中国周辺とアメリカ
中国全図
序章 学としての中国外交(趙宏偉)
はじめに
I.学問の見方
1.リアリズム系
2.リベラリズム系
3.マルキシズム系
4.コンストラクティヴィズムとパス依存論
5.学問の進化
II.国際文化論・文明論の思考と複合アプローチの開発
1.思考の必要
2.生産的な国際文明論と複合アプローチ
おわりに
第1部 日中関係
第1章 中国の近代化と日本モデル――トウ小平時代の日中関係(益尾知佐子)
はじめに――日中関係史における「80年代問題」
I.中国における日本の近代化モデル
II.日本の貢献と中国の期待
1.経済調整による対日関係の動揺
2.中国近代化への日本の貢献
3.中国の期待と焦り
III.改革開放の展開と歴史問題
おわりに
第2章 日中の「文明の衝突」――江沢民と胡錦濤の時代(趙宏偉)
はじめに
I.停滞・後退する日中関係(1994年~2002年)
1.歴史認識問題と台湾問題の構造的要素化
2.江沢民訪日の失敗
II.全面対決する日中関係(2003年~2006年)
1.胡錦濤の対日2原則
2.小泉政権の対中政策
3.中国:小泉首相を外交の相手としない
III.一進一退の日中関係(2007年~2010年)
IV.「9.7尖閣事件」と日中「氷結」
1.「9.7尖閣事件」の経緯
2.「日中漁業協定」の適用問題
3.「9.7尖閣事件」の政治・外交過程
おわりに
第3章 日中協調のメカニズム構築――関係維持のリスク・マネージメント(青山瑠妙)
はじめに
I.日中関係のリスク・マネージメント
II.アジア地域における日中関係のリスク・マネージメント
1.環境を柱とする日中の地域協力
2.東北アジア問題をめぐる日中協力の可能性
3.メコン川開発の日中対話構築
おわりに
小論1 中国の政治体制と対外政策決定(益尾知佐子)
第2部 周辺外交
第4章 中国の周辺外交(青山瑠妙)
はじめに
I.周辺重視へのシフト(冷戦終結~1996年)
II.周辺外交の本格的展開(1996年~2006年)
1.積極的周辺外交を促した国際環境と国内要因
2.周辺外交の本格的展開
III.アジアにおける国家利益の再確認(2006年~)
おわりに
第5章 中国の周辺外交と地方政府――広西チワン族自治区によるASEANとの経済協力の展開(益尾知佐子)
はじめに
I.南寧発展の背景――CAFTAへの歩み
II.中国・ASEAN博覧会と南寧サミットの誘致
III.北部湾経済圏の開発
おわりに
第6章 世論・ナショナリズムと国際協調――怒江・瀾滄江開発をめぐって(青山瑠妙)
はじめに
I.国際イシューとしての怒江・瀾滄江ダム開発
II.怒江ダムをめぐる中国の国内世論
1.賛否両論期(2003年~2004年)
2.開発と環境保全の両立へ(2004年~2006年)
3.報道規制期(2006年~)
4.怒江ダム開発議論と国際協調の可能性
III.瀾滄江ダムをめぐる中国の国際協調姿勢
1.瀾滄江ダム開発をめぐる議論(1990年代初頭~2000年代後半)
2.国際イシュー化した瀾滄江ダム開発(2000年代末~)
3.メコン川サミット
おわりに
第7章 中国の周辺外交と対インド関係――警戒と協力のアンチノミー(三船恵美)
はじめに
I.中印関係の史的展開
1.国交樹立~友好協力(1950年~1959年2月)
2.中印衝突~関係悪化(1959年3月~1975年)
3.緊張緩和(1976年~1988年11月)
4.関係正常化~関係改善(1988年12月~1995年)
5.関係悪化~関係改善(1996年~1999年4月)
6.関係発展と摩擦拡大(1999年4月~2010年)
II.二律背反な中印関係
1.中印関係の協調軸
2.中印関係の対立軸
III.中国の対インド戦略
おわりに
第8章 中国の周辺外交と対イラン関係――アメリカとの対立(三船恵美)
はじめに
I.米中外交戦略と中国・イラン関係
1.アメリカの外交戦略と中国・イラン関係
2.中国の外交戦略とイラン
II.中国からイランへの武器・軍事技術移転をめぐる米中関係
1.アメリカの影響下での中イ関係(イラン・イスラーム革命前)
2.米中軍事協力と中イ武器移転関係の構築(米イ断交~1986年)
3.湾岸における米軍と中国の武器移転(1987年~1989年)
4.アメリカの対中国安全保障戦略の転換(1990年~1996年)
5.中国の国際軍備管理体制参入と対イラン関係の深化(1997年~2006年)
6.イラン問題の国連付託以降の中国の対イラン関係の深化(2006年~2011年1月現在)
おわりに
小論2:中国の海洋政策(益尾知佐子)
第3部 大国外交と多国間外交
第9章 中国の大国外交と対アメリカ関係――中国の台頭と米中関係(三船恵美)
はじめに
I.冷戦終結が米中関係に与えた影響
1.二極構造の崩壊と米中関係の再定義
2.日米同盟の再定義と中国の多国間外交
3.中国の兵器・軍事技術拡散と「中国の台頭」
II.冷戦後米中関係の変化とその要因
1.人権・民主主義
2.台湾
3.中国の軍事近代化
4.グローバリゼーションと米中経済関係
おわりに
第10章 中国の大国外交と上海協力機構――北方集団協力体制の構築(趙宏偉)
はじめに
I.中国の北方集団協力体制
II.中国が目指す「上海協力機構」
III.上海協力機構に苦悩する中国
1.経済圏の構築が進まない上海協力機構
2.市場経済に馴染まないロシア
IV.中央アジアからユーラシアへ
1.2カ国間と多国間経済協力体制の構築
2.中ロ印三国協調からBRICs連携へ
V.アフガニスタン問題における利益と責任と能力
おわりに
第11章 中国の大国外交とASEAN――東アジア地域統合をめぐる日中のわたりあい(趙宏偉)
はじめに
I.偶然たる始まり――東アジア地域統合の提起(1990年~1995年)
II.必然たる流れへ――中国外交の根本たる転換(1995年~1998年)
III.主軸の確立――中国・ASEAN FTA枠組み協定(1999年~2004年)
IV.集約と拡散――東アジア首脳会議(2005年~2011年)
おわりに
第12章 中国の大国外交と東北アジア集団協力体制の構築――六カ国協議を統合の軸として(趙宏偉)
はじめに
I.前史・大国間のパワーシェアリング
II.始動・北京六カ国協議と東北アジアの地域主義
1.地域主義の機運と「米朝枠組み合意」
2.六カ国協議と東北アジア集団協力
3.東北アジア集団協力体制の取組み
III.停滞・日米の困惑と北朝鮮の抵抗
1.日米の困惑
2.北朝鮮の抵抗
おわりに
小論3:中国外交における「核心的利益」――台湾、チベット、新疆……(趙宏偉)
あとがき
中国外交重要年表
中国外交小事典
参考文献
索引
前書きなど
あとがき
2009年初夏、益尾、三船、趙は小さい研究会を始めた。きっかけとなったのは『中国研究月報』(一般社団法人中国研究所)に中国外交研究の特集を1つ企画することであった。3人は「学としての中国外交」の研究を志し、それぞれ日本学術振興会が助成する研究課題の代表者として、中国外交の研究に取り組んできた。3人は特集テーマの選定、内容の打ち合わせ、論点のディスカッション、原稿の練り上げなど、研究活動を進めていった。研究の質を高めるために、同年10月、3人はアジア政経学会年度大会で特別分科会を企画し、学会報告を通して多くの研究者からご批判をいただいた。初冬、『中国研究月報』11月号に「特集=日中関係のプロセスとメカニズム」を発表することができた。
2010年晩春、疲れ気味の3人は同志青山を迎え入れたことで、元気を取り戻した。4人は2本目の特集だけではなく、本書の企画をも立ち上げた。息が切れそうな2010年であった。初冬、『中国研究月報』11月号に「特集=中国アジア外交のダイナミズム」を刊行することができ、同時並行で本書の企画、著述、編集を進めた。
4人は大学生・院生向けの教科書に適し、かつ学術本としてのレベルに達するような中国外交研究の専門書を目指し、この本の執筆にあたった。中国の外交に興味を抱き、大学院へ、研究者へと進もうとする若者が増えることを切に願っている。
本書は全13章と3つの小論のうち、5つの章が既刊の論文を書き直して再編集したものである。私たちは論文の取捨選択に際し、本書を「論文集」ではなく1つの知識体系をなす専門書として編集することを方針とした。下記の諸章は『中国研究月報』に既刊された論文を再編集したものである。
第2章 2010年11月号「日中の『文明の衝突』――構造的要素と行動パターン(1990年代半ば~)」
第5章 同上号「世界に飛び立つ南寧――中国の地域主義の展開における広西地方政府の役割」
第6章 同上号「中国の世論・ナショナリズムと国際協調――怒江・メコン川ダム開発をめぐって」
第7章 同上号「国交60年を迎えた中印関係」
第11章 2009年11月号「中華振興の外交と日中のわたりあい――東アジア地域統合プロセスの考察」
本書の研究・著述のなか、多くの研究者より、ご教示、ご助力をいただいた。『中国研究月報』編集委員会、とりわけ編集長田島俊雄、編集委員大里浩秋、代田智明、国谷知史、菊池道樹の諸氏、編集者川崎真美は、2年にわたる私たちの研究活動に対し、指導、教示、資料提供、論文査読・修正など、力を惜しむことなく支援してくださった。心から感謝を申し上げたい。学会などの場でご教示していただいた天児慧、石郷岡建、李鐘元、岩下明裕、岡田充、岡部達味、川島真、国分良成、佐藤考一、下斗米伸夫、高木誠一郎、高原明生、田中明彦、菱田雅晴、堀本武功、松田康博、毛里和子の諸氏に感謝を申し上げたい。なお、本書の出版を快諾し、企画、編集、出版に尽力してくださった明石書店、並びに編集長大槻武志、本書の編集者佐藤和久のお二人に感謝を申し上げたい。
3年目の春、本書を世に問うこととなった。論証が不十分な点やミスなどがあれば、すべての文責は私たちにある。
著者一同