目次
序論
(1)研究の概要
(2)先行研究
第1章 女性政策の端緒としての戦後民主化政策
第1節 婦人参政権の実現
(1)婦人参政権実現の歴史
(2)婦人参政権の争点
(3)婦人参政権の効果
(4)小括
第2節 労働基準法と均等待遇
(1)労働基準法制定の経緯
(2)労働基準法における女性に関する規定
(3)労働基準法の意義
(4)小括
第3節 日本国憲法と男女の本質的平等
(1)憲法草案作成までの経緯
(2)男女平等に関する規定
(3)帝国議会における男女平等規定の審議
(4)小括
第4節 小括
第2章 男女雇用機会均等法の制定
第1節 勤労婦人福祉法の制定
(1)高度経済成長期の女性労働
(2)高度経済成長期の雇用における男女不平等と女性政策の不在
(3)勤労婦人福祉法の制定
(4)小括
第2節 女子差別撤廃条約の署名
(1)国際婦人年の国連の取り組みとわが国における国際婦人年の効果
(2)女子差別撤廃条約
(3)小括
第3節 男女雇用機会均等法の制定
(1)法案の作成
(2)法案の国会審議
(3)女子差別撤廃条約の批准
(4)小括
第4節 小括
第3章 男女共同参画社会基本法の制定
第1節 第4回世界女性会議とジェンダー概念の登場
(1)国連における女性の地位向上の取り組み
(2)行動綱領
(3)小括
第2節 男女共同参画ビジョン
(1)国連婦人の十年以降の日本の取り組み
(2)男女共同参画ビジョン
(3)小括
第3節 男女共同参画社会基本法の制定
(1)男女共同参画社会基本法制定の経緯
(2)男女共同参画社会基本法の意義
(3)小括
第4節 小括
結論
(1)戦後民主化政策
(2)勤労婦人福祉法の制定
(3)女子差別撤廃条約の署名
(4)男女雇用機会均等法の制定
(5)男女共同参画社会基本法の制定
(6)むすびにかえて——戦後日本の女性政策
あとがき
参考文献
索引
前書きなど
序論
(1)研究の概要
1999年6月23日、男女共同参画社会基本法が公布・施行された。男女平等の実現に向けては、戦後さまざまな取り組みがなされてきたが、その中でも、男女共同参画社会基本法の制定の意義は大きく、わが国の女性政策の歴史に新たな一歩が刻まれたとされている。男女共同参画社会基本法は、婦人参政権に始まるわが国の女性政策の「一つの到達点であるとともに、21世紀に向けた新しい社会の構築の出発点でもある」のである。
本研究は、戦後日本における女性政策について、男女共同参画社会基本法と共に画期をなした男女雇用機会均等法を取り上げ、この二つの政策がわが国の女性政策の歴史にどのように位置づけられるのかを検討することにより、戦後日本の女性政策の全体像を明らかにしようとする研究である。
女性政策とは男女平等を目指す政策ととらえるが、これまで男女平等といっても漠然としており、何を平等というのかが不明確であった。そこで本研究では、女性政策を、政治的、経済的、社会的な関係における男女の平等を目指す政策ととらえる。それは、この間に定められた男女平等の規範である、日本国憲法(1947年)、「世界女性の憲法」といわれる女子差別撤廃条約(1979年)、男女共同参画社会基本法(1999年)の三つに通底する基軸となっている概念であるからである。日本国憲法には、「すべて国民は、法の下に平等であつて、……性別、……により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」(第14条)と定められており、女子差別撤廃条約は、男女平等の定義を、「政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても」平等であることとする(第1条)。また、男女共同参画社会基本法は、目指すべき男女共同参画社会について「男女が、社会の対等な構成員として、自らの意思によって社会のあらゆる分野における活動に参画する機会が確保され、もって男女が均等に政治的、経済的、社会的及び文化的利益を享受することができ、かつ、共に責任を担うべき社会」(第2条)としている。このように、「政治的、経済的、社会的な平等」は、男女平等に関して時代を超えて通底する概念となっている。
したがって、本研究では、「男女は、政治的、経済的、社会的に平等である」ということを基本にして、この観点から見た場合、わが国の女性政策は、総合的に各分野が均衡よく男女平等が発展してきたのか、それともどこかの分野のみが発展ないしは追求され、他の分野は置き去りにされてきたのか、そうであればその理由は何なのかを分析する。そしてその中で、それぞれの女性政策の成立過程において、何が重要な役割を演じたのかをアクター(主因)、環境(誘因)、それまでの制度(素因)に分けて検討を行い、とりわけ政策決定過程におけるアクターの意図に着目しながら、女性政策の歴史の全体像を明らかにしたいと考える。このように、女性政策を、政治的、経済的、社会的関係における平等という観点でまず分析し、その上でそれらを総合的に見ることによって、女性政策の全体像が、より明らかになると考える。
(…後略…)