目次
はじめに
第 I章 改憲——政府への命令から国民のしばりへ
一 続々とデビューした改憲案
二 憲法と立憲主義の深い関係
三 立憲主義を捨て国柄憲法へ
第II章 二一世紀における改憲の動き
一 二一世紀初頭改憲はどう進んだのか?
二 小泉政権——急ピッチの改憲案づくり
三 安倍政権——本格改憲政権の登場と挫折
四 福田政権——改憲大連立の模索
五 麻生政権——海賊新法と田母神事件
第III章 九条を壊したら戦争への道——戦争の国か平和の世か 1
一 九条はこう変えられる
二 何のための九条改憲
三 九条を変えて戦場へ
四 日米共同戦争プランと改憲
五 改憲は地獄の戦場への道
六 九条改憲の本質を見つめよう
第IV章 憲法九条 戦争のない世界へ——戦争の国か平和の世か 2
一 憲法九条の意味と価値
二 平和主義と民主主義の結合
三 安全保障と平和憲法
四 軍隊と市民の安全
五 専守防衛論と改憲
第V章 九条で平和を創る——戦争の国か平和の世か 3
一 武力によらない平和づくり
二 朝鮮半島の非核化と平和構築
三 東アジア不戦共同体への道
四 非武装憲法を実践するコスタリカに学ぶ
第VI章 政教分離の緩和——戦死のススメの制度化
一 改憲と靖国
二 靖国の闇
三 政教分離原則の確立とゆらぎ
四 戦争克服のため政教分離原則の再確立へ
第VII章 押しつけ憲法論を問う
一 改憲と押しつけ憲法論
二 憲法は押しつけられたか——憲法誕生史
三 押しつけ憲法論の仮面をはぐ
四 押しつけ憲法論の崩壊
第VIII章 国民投票の朝——憲法を生かし広げるために
一 国民投票の朝が来る
二 国民投票の意味
三 あるべき投票のルールとアンフェアな法
四 国民投票とワイマール憲法の崩壊
五 改憲の動きはこれからどうなるのか?
六 市民が改憲に立ちはだかる!
おわりに
参考文献
前書きなど
おわりに
憲法改正問題は、現在進行形のホットな問題です。衆院選までは目立った改憲の動きはないかもしれませんが、衆院選後は改憲プロセスが再起動するおそれが大です。いまは休眠している衆参両院の憲法審査会が動き始め、それに連動して改憲勢力がうごめいてさまざまな改憲の動きを強めていく危険がある、と覚悟しておかなければなりません。こうした改憲前夜という状況のなかで、私は、改憲は日本の未来に大きな災いであるという強い憂慮と、憲法を変えさてはならないというやむにやまれない思いから、本書を出版することにしました。
改憲の帰趨は、直接的な明文改憲の動きだけで決まるものでなく、もろもろの要因に大きく左右されます。例えば、海賊新法、派兵恒久法、アフガン派兵、米軍再編などの立法改憲、解釈改憲に直結した軍事動向はもとより、衆院選後の政治状況、オバマ政権の世界軍事戦略によってもろに影響を受けます。これらが悪い方向に進んでいけば、改憲の暴風が勢力を増して日本列島に接近するということになります。
憲法を踏みにじる政治の横行によって憲法の空洞化が進んでいるだけに改憲の動向に予断も油断も許されない状況ですから、改憲暴風にシッカリと備えておくことが必要になっています。本書に意義があるとすれば、それはこの備えに役立つことです。
いうまでもなく、憲法をつくる主体は市民であり、憲法改悪をとめるのは市民の仕事です。平和・人権・民主の憲法は人類の多年にわたる努力の成果であり、市民は不断の努力によりこれを守り、未来と子供たちに引き継いでいかなければなりません。
市民が改憲に備え反改憲の仕事を果たすには、まずもって、これまでの改憲の動きをキッチリと総括し、憲法の意義を再確認しておくことが欠かせません。そのために、本書は、まず、改憲の動向特に二一世紀に入ってからの改憲の動きを追跡調査し、どのような内容の憲法をつくろうとしているのかを整理しました。次いで、その政治的ねらい・意図を分析しました。そして、いま推し進められている改憲の動きが、平和・人権・民主を根こそぎ破壊する危険なたくらみであることを明らかにしました。そのうえで、憲法は、世界に胸を張って誇れる珠玉の価値があり、二一世紀を平和・民主・人権の世紀にするために大いに生かしていくことこそが求められているのだと訴えました。
改憲をたくらむ勢力を決して侮ることはできませんが、しかし、市民の間ではいまだ九条改憲反対の世論が根強くかつ幅広く存在していることも確かです。私は、この市民の改憲反対の意見をより一層広げ強めることが、改憲をとめる力の源泉であると確信しています。その確信に立って、私は本書で、憲法を守り生かす動きをより確かなものにするために、改憲をストップするための実践的な立場から、戦後憲法学の成果を取り入れながら憲法を掘り起こしてその意義と価値を明らかにし、また、憲法の眼で、珠玉の憲法をないがしろにしたうえになきものにしようとしてきた政治の動きを分析し、これらを総合して改憲の問題点を明らかにしようと試みました。
本書が、改憲をとめるという市民の皆さんの仕事に役立てたら望外の幸せです。
(…後略…)