目次
出版にあたって
1 戦争と平和のはざま
1 憲法制定のころと私の青春(角尾隆信)
コラム 飛騨川バス転落国賠訴訟(角尾隆信)
2 首相の靖国参拝はなぜ問題か(山口 広)
コラム 旧埼玉銀行のバブル商法に鉄槌(山口 広)
3 9条改悪を叫ぶ人たちの理由を考える——アフガニスタン・アフリカの現場から(猿田佐世)
コラム イラク「人質」事件(猿田佐世)
2 自由はいま
4 「日の丸・君が代」の強制と思想・良心の自由(戸田綾美)
5 表現の自由と民主主義の危機(日隅一雄)
コラム 当事者の力(戸田綾美)
6 なぜ無実の者が自白するのか——刑事弁護の危機を問う(村上一也)
コラム 勾留の裏側(花垣存彦)
7 拘禁された人たちの人権——監獄人権訴訟と監獄人権センターの結成(海渡雄一)
コラム 「被告人は……。無罪」事件の快感(日隅一雄)
8 弁護士と国会——盗聴法反対の活動から共謀罪反対の活動へ(海渡雄一)
3 差別とたたかう
9 外国人、憲法そして国家について(鬼束忠則)
コラム 知的障害者への解雇(只野 靖)
10 男女共同参画社会基本法を生かして——「ジェンダーフリー・バッシング」の超克(戸田綾美)
コラム ジェンダーフリーへのバックラッシュ(山口 広)
11 女性への暴力をなくすために(秦 雅子)
コラム 「いじめ・排除」文化からの脱出(古田典子)
4 広がる「格差」と破壊される生活環境
12 規制緩和とのたたかい——タクシー運賃ダンピング通達国家賠償請求訴訟(宮里邦雄)
コラム 日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事故(海渡雄一)
13 国家的不当労働行為とのたたかい——JR採用差別事件(宮里邦雄)
コラム 忘れられぬ命(宮里邦雄)
14 性別と雇用形態による差別の禁止を求めて(古田典子)
コラム 「別姓」で子どもを生んでみて(秦 雅子)
15 急速に広がる保育園民営化にNO!(猿田佐世)
16 老後を脅かす企業年金の廃止・減額(花垣存彦)
コラム 山一抵当証券被害を回復するために(日隅一雄)
17 環境保護のために憲法改正は必要か(只野 靖)
コラム 故高木仁三郎先生のこころざし(海渡雄一)
18 騙され続ける消費者の救済をめざして——消費者主権の確立と自己責任の間(五十嵐 潤)
コラム 振り込め詐欺の現状(村上一也)
コラム どぶ板剥がしに格闘(五十嵐 潤)
19 破壊的宗教カルトとのたたかい(山口 広)
コラム 法輪功弾圧と政教分離(鬼束忠則)
5 憲法を守るために
20 護憲の流れをつくる「手をつなぐ」活動(猿田佐世)
21 情報格差システム——憲法改正国民投票法案の最大の問題点(日隅一雄)
東京共同法律事務所構成弁護士(執筆者一覧)
前書きなど
出版にあたって
私たちは、今ひしひしと迫っている「日本国憲法の危機」を強く感じています。
誕生から60年を経て、この国のありようを定め、この国で暮らす人々の生活と人権を支えてきた日本国憲法を変えようという動きが強まっています。2006年10月に就任した安倍晋三首相は「美しい国、日本」という政権構想を掲げました。集団的自衛権の行使、教育基本法改正など、その内容は「美しい国」とは正反対の「方向」にわが国を変えようとしています。「改憲の手続法」である国民投票法案の制定も強行されそうな状況です。
私たちは、このような憲法をめぐる危機的状況を前にして、憲法や人権に関わる問題をあらためて見つめ直したい、憲法のもつ意義を再確認したい、そして憲法9条をはじめとする日本国憲法の価値をかけがえのないものとして守っていきたい、という思いを強めています。
私たち弁護士の活動は憲法と人権を守る市民のたたかいを法律専門家として支えているにすぎません。たたかいを本当に担っているのは、人権侵害に抗い、人権の確立のためにさまざまな活動を展開している人たちであり、それをわがこととして支援連帯している人たちです。私たちは、困難にめげず、さまざまな障害を克服し、このようなたたかいに挑んでいる多くの人たちに心からの尊敬と共感、そして連帯のエールを送りたいと思います。
私たちの東京共同法律事務所は2007年4月に設立40周年を迎えます。
1967年4月に、新宿駅南口の近く、旧青梅街道に面した小さなビル内に、ささやかな事務所を構えてから、はやくも40年という月日が経ちました。
当初は弁護士3名で設立しましたが、現在は弁護士14名、事務局員18名を抱える事務所となりました。また、この間私たちの事務所でともに活動し、その後、独立して事務所を構えて活躍している数多くの弁護士がいます。
弁護士が増え、時代が移る中で、活動分野も拡がり、それぞれが専門とする分野、得意とする分野を持ちながらも、広くあらゆる法的問題を取り扱う事務所となりました。
私たちの事務所が心掛けてきたこと、それは常に働く人や市民の権利と生活を守る視点に立って活動すること、そして、そのためにも私たちの活動を支えその拠りどころとなっている日本国憲法を守り、生かす、ということでした。
本書は、事務所設立40周年の機会に、それぞれが現在取り組んでいる、あるいは、これまで取り組んできた「憲法と人権」にかかわる裁判や活動、さらには憲法と人権について考えていることなどについて執筆したものです。また、日頃の弁護士の活動から垣間見る人権の状況をコラムとして収めました。
憲法に関わる本はたくさん出版されていますが、憲法の実践に関わって弁護士が書いたものはあまりありません。本書は、ひとつの法律事務所に属する弁護士全員が憲法と人権について執筆したものとしてユニークなものではないかと思います。執筆にあたっては、法律専門家でない人が読んでも分かるように心掛けたつもりです。
本書が多くの方々の目に触れ、日本国憲法についての思いを私たちと同じくされることを願ってやみません。
2007年2月
編著者
東京共同法律事務所
弁護士 宮里邦雄
弁護士 山口 広
弁護士 海渡雄一