紹介
日清・日露から朝鮮併合、満洲国まで---日本を結節点として、アジアは相互に規定しあいながら近代化をすすめた。近代日本の国家デザインはどのように描かれ国民国家形成がなされたのか? 戦争の世紀に抗して芽生え受け継がれてきた平和思想の水脈とは? アジアであるとは何なのか、そして未来へアジアはどう連携していくのか。グローバルな視点のなかにアジアの思想と空間を問い直し、境界と想像を越えた思想のつながりを描き出す。
同時刊行 『アジアびとの風姿』
★著者のメッセージ
境界と想像を越える、思想のつながり
探りあてられた地下水脈は、いま私たちの足下をながれる
思想不毛といわれる時代、「知る悦び」を知る人に捧ぐ
目次
はじめに
Ⅰ 思想連鎖への道
第一章 史料に導かれて---連鎖視点への歩み
一 欧米から日本へ、そして大衆演芸へ
二 日本からアジアへ、そして思想の環へ
三 関西館とアジア情報の収集・発信
第二章 満洲国が語りかけるもの
一 「アジア」とのめぐりあい
二 共同研究の恩恵
三 満洲国と戦後日本
四 近代日本と空間アジア
Ⅱ 空間アジアと思想連鎖
第三章 夢の世に、夢を追って---宮崎滔天『三十三年の夢』の思想史脈
一 落花の歌--「挫折」と「懺悔」
二 孫文と宮崎滔天---「東亜の珍宝」と「抱負凡ならず」
三 宮崎八郎---「自由は天真」
四 宮崎民蔵と弥蔵---「百姓の使者」と「革命の羅針盤」
五 ツチと龍介---「救って行く義務」
六 「民権」と「国権」そして「奇」と「怪」
七 「狂」「侠」そして「個人」と「アジア」
八 副島種臣・曾根俊虎---中国問題の先達
九 共有される夢---「中国革命」と「世界革命」
一〇 アジアは欧米にもある---大亜細亜主義の真義
一一 人を結ぶ力---中国革命への立ち位置
一二 そこに書かれていないこと
一三 心に病むところ---「小節」と「偉業」
一四 任侠の精神は過ぎ去りぬ---「志操」と「現実主義」
一五 「百年後の日本」--理想を許さぬ国
第四章 連鎖視点からみる辛亥革命と日本---アジアの「革命」史脈
一 交差する眼差し
二 東アジアにおける革命潮流
三 辛亥革命の革命性をめぐって
四 辛亥革命と明治日本 空間アジアと思想連鎖
五 革命の衝撃と維新の連鎖
六 アジアの「革命」史脈
第五章 空間アジアを生み出す力----境界を跨ぐ人々の交流
一 はじめに
二 日本におけるアジアへの視圏の広がり
三 日本に対するアジアからの眼差しの変転
四 おわりに
第六章 東アジアにおける共同体と空間の位相----「環地方学」からアジアを問い返す
一 イコン(聖像)化される言説の命運
二 東アジア共同体論の推移
三 「環地方」としてのアジア
四 普遍と特性の「一元不二」
Ⅲ 平和思想の史脈
第七章 日本の非暴力思想の史脈とその展開
一 「非暴力」とは何か
二 幕末・明治前期の非暴力思想
三 日清・日露戦争と非戦論
四 「非暴力の社会」を求めて
五 日本国憲法の非暴力思想とその展開
六 持続する志操の先へ
第八章 安重根・未完の「東洋平和論」---その思想史脈と可能性について
一 二つの日記から
二 評価の対極性のかなたに
三 東アジアからの視点
四 「東洋平和論」への道
五 二つの「東洋平和」
六 「東洋平和論」の理論構成
七 「白鳥の歌」----書かれざる「東洋平和論」の意義
第九章 正岡子規・四百年後の夢---理想を紡ぎ出す力
Ⅳ 学知と外政―井上毅の日本とアジア
第一〇章 日本の国民国家形成と国学知の思想史脈
一 平準化と固有化の相反ベクトル
二 国民国家形成における泰西主義と啓蒙主義
三 国家形成と国学知の領域
四 国民形成と国学知の機能
五 井上毅における国学知の位相
六 国学知の特性と意義----ナショナリティの探求
七 国学知から空間学知へ
第一一章 井上毅の国際認識と外政への志向
一 井上毅の人となりと世評
二 外政への志向と対清交渉
三 宗藩関係と朝鮮中立化構想
四 主体的思考と選択的思考
第一二章 後ろを見る眼---歴史を学ぶということ
一 後ろから押す力
二 様々な人生を自らの中へ
三 事実の断片を繋ぐ視点と空間認識
四 歴史を受け継ぎ、伝え、応答する責任
あとがき
索 引