紹介
近年、子どもの学力をめぐって散見する「10歳の壁」という言葉。また教育関係の雑誌や本の中には、「10歳までに決まる頭のいい子」「運動神経は10歳までに」「10歳でつまずかないために」などという文句が躍っている。しかし、この「10歳まで」という言葉には、いったいどんな根拠があるのか。この点を検証した著者は、そもそもこの「壁」とは、障害児教育の分野で言われ始めたことであり、脳科学の世界でも未だはっきりとしたエビデンスが無いことをつきとめる。と同時に、この10歳前後という年齢は、発達心理学の領域では、やはり非常に注目すべき年齢であるとする。このころに子どもにおこる大きな変化を「飛躍の時」として受けとめ、楽しんで見守るために、これまで明らかにされてきた様々な知見を紹介。また付随して起きるこの歳ごろ特有の問題への対処法を、専門であるソーシャル・スキル・トレーニングの手法などを交えながら紹介する。
目次
第1章 9歳、10歳はなぜ取り上げられるのか?
第2章 9歳、10歳ってどんな年齢?
第3章 「自分」って何?-自己意識の変化
第4章 「考える力」の急成長-認知の変化
第5章 「複雑な気持ち」を知る-感情の変化
第6章 親より「友情」へ-友達関係の変化
第7章 「他人の視点」の獲得-道徳性の変化
第8章 9歳、10歳の子どもとは?-まとめ
第9章 9歳、10歳の「社会性」を育てる支援
第10章 9歳、10歳の「道徳性」を育てるアプローチ