紹介
艶情味あふれる人情本の真髄を探る。
江戸時代末期に登場し、女性読者を虜にする
艶情味あふれる恋愛を描いた、人情本。
本書は、人情本というジャンルが確立した
天保期の作品を軸に、その特質を明らかにする。
江戸の爛熟文化の下、「戯言を言われても
顔を赤らめない」ほど色事に興味を示した女達の、
秘めやかな欲求を、人情本が満たしたのは何故か。
人情本全体の精神を、出版、時代、
人物など様々な問題から解き明かす。
【本書は、結果的に天保期人情本に関わる論考が多くなっているが、筆者の興味もまた天保期人情本が当時の人情本読者から人情本として受け入れられていたという思いに基づいているからに他ならない。(中略)ともあれ、作者、絵師、出版等、人情本には今後解明されなければならないさまざまな課題が山積している。...本書「はじめに」より】
目次
はじめに
第一章 あだ―春水人情本の特質
第二章 文政期人情本の一側面―『桐の一葉』をめぐって
第三章 「人情」から人情本へ
第四章 『春色梅児誉美』の成立
第五章 「春色梅暦」シリーズの変貌
第六章 『春色湊の花』の位置
第七章 『多満宇佐喜』をめぐって
第八章 人情本作者鼻山人の立場
第九章 『花街桜』の趣向―鼻山人の再検討
第一〇章 素人作者曲山人
第一一章 春水以後―文政期人情本への回帰
第一二章 人情本ノート
第一三章 人情本ノート(二)
第一四章 戯作と出版ジャーナリズム
第一五章 辰巳の風―洒落本・人情本の深川
第一六章 二人の艶二郎―『江戸生艶気樺焼』から『総籬』へ
おわりに
初出一覧