紹介
役に立つ日本語史入門。
身近な疑問を着実に育て、日本語運用のメカニズムに迫る。
数々の新見を平明に提示した、日本語史研究の新しい波(ヌーヴェルヴァーグ)。
名著の新装版!
【日本語は、個々の日本語話者のウチにある。日本語話者の一人一人が、日本語を、もっと使い勝手がよくなるように変化させてきたし、現在も変化させている。日本語を話すことによって、自分自身も変化の進行に参加している。
日本語史の目的は、現に話されている日本語を、日本語話者の集団によってコントロールされているダイナミックな体系として把握し、日本語運用のメカニズムを、そして日本語に生じる変化のメカニズムを理解することにある。
日本語がひとりでに変化するはずはない。日本語話者が日本語を変化させているのだという事実を明確に認識することが、日本語の歴史への入り口である。】
目次
はしがき
【現代日本語をより深く理解するために役立つ、おもしろくて、わかりやすい、正統の日本語史を―。】
0 イントロダクション―日本語史の知識はどのように役立つか
【現代日本語の実像を的確に捉えることが日本語史の目的である。したがって、その軸足は、つねに現代日本語の上にある。日本語史は現代日本語から出発し、現代日本語に帰着する。】
1 日本語語彙の構成
【ワンワンやゾロゾロなど、活写語の重要性を確認する。音韻体系の異なる古代中国語を借用して漢語を形成し、また、現代英語を借用してカタカナ語を形成して豊富な語彙をもつことができたのは、多様な音のリソースが活写語にあったからである。】
2 借用語間のバランス
【漢字を自由に組み合わせて形成できる漢語は造語力に富んでいるが、その副作用として、現代日本語は漢字を見ないと理解できない言語になっている。難解な漢語をカタカナ語で置き換えることによって、現在、そのひずみが修正されつつある。】
3 言語変化を説明する―怪しげな説明から合理的説明へ
【p>ɸ>h というハ行子音の変化は発音労力の軽減として説明されてきたが、聞き手にどのように聞こえるかという視点が欠落していた。その誤りを指摘し、言語変化の捉えかたを考える。】
4 音便形の形成から廃用まで
【音便形は発音の便宜のための語形であると説明されてきたが、その説明の矛盾を指摘し、文体指標としての機能に着目して、形成から廃用までの過程を跡づける。】
5 日本語の色名
【シロ、クロ、アカ、アヲの4原色を基盤として形成された色名の体系と、その発達過程とを、アオに着目して跡づける。言語を構成するすべての要素は、それぞれに独自の機能を担って体系のなかに位置づけられていることを明らかにする。】
6 書記テクストと対話する
【書記テクストを無機的な資料として処理したりせずに、対象と対話する姿勢で臨まなければ真実を引き出すことはできない。クレナヰ、カラクレナヰを例にして、対話の実践を試みる。】
7 係り結びの機能
【ゾ、ナムの機能は、その直後で、ディスコースの展開を、ヒトマズ切る(ゾ)、大きく切る(ナム)、と予告することであった。その機能は徐々に形成された接続詞によって置き換えられた。コソは直前の語を択一する助詞であり、現代語にも生きている。】
索引
第二刷補注