目次
詳細な目次
第1章 今やっていることをみんな止めてくれないか
エジソンの誤り/なぜ一番乗りで最も優れていても、それで充分ではないのか/だけどこの製品はひどいですよ/技術的変化は簡単、社会的・文化的・組織的な変化は困難
第2章 成熟――テクノロジー中心の製品から人間中心の製品へ
テクノロジーのライフサイクルと消費者/テクノロジー中心の青年期から消費者中心の成熟期へ/顧客主導の会社への移行時期/人間中心の製品開発に向けて /人間中心の製品開発の三本柱――テクノロジー、マーケティング、ユーザー経験
第3章 情報アプライアンスに向けて
情報アプライアンス/いろいろな情報アプライアンスの例/トレードオフ/アプライアンス群はシステムである/ビジョン/情報アプライアンスの設計原理/情報アプライアンスの三つの公理
第4章 パソコンのどこが悪いのか
パソコンの第一世代と第二世代/使いたいと思っていてもコンピュータを使いたくならないのはなぜか/なぜパソコンはこんなにも複雑なのか/活動ベースのコンピューティング
第5章 魔法の妙薬はない
人月の神話/使いにくさの問題への、五つの解決法/情報アプライアンスによる解決
第6章 インフラストラクチャの力
代替可能な商品と不可能な商品という2種類の市場経済/インフラの教訓
第7章 アナログであること
世界を理解する/人間対コンピュータ/人間を機械のように扱う/世界を理解する/補い合うシステムとしての人間とコンピュータ
第8章 なぜ、すべてのものがこうも使いにくいのか
テクノロジーという両刃の剣/複雑さと難しさ/ものを使いやすくするのは何か/概念モデル/コンピュータを使いやすくする
第9章 人間中心の開発
人間中心開発を重視する/ユーザー経験に拘わる6つの専門分野/テクノロジー、マーケティング、ユーザー経験――成功のための三本柱
第10章 人間中心の開発をしたいなら組織を変えなさい
製品開発チームの構造/会社の組織構造/人間中心の開発のために企業に必要なこと/価値あるものには困難がともなう
第11章 革新テクノロジー
革新テクノロジー/革新テクノロジーとしての情報アプライアンス/なぜ企業内部から世界を見ることが難しいのか/顧客が誤っているとき/現在の顧客だけに耳を貸すな、これからの顧客の話を聞こう
第12章 情報アプライアンスの世界
情報アプライアンスのビジネスモデル/プライバシーについて/ビジョン――情報アプライアンスの世界
付録 情報アプライアンスの例
写真における情報アプライアンス革命/家庭用医療アドバイザー/天気と交通の情報表示/家庭での買い物リスト/園芸アプライアンス/知的参照ガイド/家庭財産管理アプライアンス/インターネットアプライアンス/壁や家具に埋め込む/究極のアプライアンス――衣服や体に埋め込む
前書きなど
訳者から改題版『インビジブルコンピュータ』の読者へ
「ユビキタスコンピューティング」の考え方は、ゼロックスPARCにいたマーク・ワイザーが1990年頃に提唱し、1990年代末頃から急に広がりを見せた。しかし、このユビキタスコンピューティングは、マーク・ワイザーの思いとは裏腹に、単にコンピュータをいたるところに組み込んだり、センサーネットを張り巡らすだけ、というような理解も少なくなかった。
マーク・ワイザー自身は実は「カーム(穏やかな)コンピューティング」ということを言いたかったのだ。ドナルド・ノーマンはヒューマンインタフェースの立場から、このユビキタスコンピューティングを的確に捉え、自ら Invisible Computer と題する本を1998年に出版した。これを受け我々は翻訳に取りかかり訳本を出したが、当初は『パソコンを隠せ、アナログ発想でいこう』という書名であった。しかしこれでは、物理的にパソコンを隠したり、あるいは、アナログを復活させようということだと誤解されかねない。正しくノーマンの考えを反映させるために、出版社に無理を言って、今回改めて『インビジブルコンピュータ』と改題し、刊行することになった次第である。
マーク・ワイザーのユビキタスコンピューティングの考えを人間中心の立場から理解する上でも、この本は非常に重要であり、しっかり読み直す機会となってくれればと願っている。