紹介
新しさ、純粋知性、真心、清廉、気高……。
多くの理想を抱えて、
ひと一倍勤勉な作家であり知識人であった
横光利一の今読んでも眩しいぐらいの傑作が、
現代仮名遣いによって甦る!
横光の名前は新感覚派というレッテルと共に
語られることが多い。
新感覚派はモダニズム時代に勃興した、
近代日本では珍しく世界的な同時代性を有する
清冽な文学運動だったが、
それだけに日本の文壇、文学史では異端の刻印という
側面もあった。
モダニズム文学は当時の文壇文学の重鎮たちからは
若者による奇を衒った一時的流行と見られがちだった一方、
プロレタリア文学派からはブルジョワ的であると非難された。
横光利一はそうした両面の無理解を
真正面から受けて立ち、真に新しい文学の王道を拓くべく、
実作と文学理論の双方で苦闘していたのである。
目次
収録作品
月夜
草の中
幸福の散布
頭ならびに腹
セレナード
表現派の役者
街の底
園
鼻を賭けた夫婦
美しい家
火の点いた煙草
盲腸
七階の運動
機械
薔薇
榛名
解説 モダニストの軽やかな孤独 長山靖生