紹介
感性を,美や快といった評価に止まらない「包括的,直観的に行われる心的活動およびその能力」と定義し,その様々な表現や現象を知覚心理学や認知心理学の立場から実証的データに基づき検討。同時に,その方法論や知見を通して感性の特性やプロセスも考察し,「感じること」と「知覚すること」を双方向からアプローチする。
◆執筆者一覧(執筆順。*は編著者,**は編集幹事)
三浦 佳世* 九州大学大学院人間環境学研究院教授 序章,第6章
錢 琨 九州大学持続可能な社会のための決断科学センター助教 第1章
田谷修一郎** 大正大学人間学部講師 第2章
河邉 隆寛 NTTコミュニケーション科学基礎研究所主任研究員 第3章
荒生 弘史** 大正大学人間学部准教授 第4章
山本健太郎 東京大学先端科学技術研究センター,日本学術振興会特別研究員 第5章
長 潔容江 九州大学大学院 人間環境学府博士後期課程 第7章
山田 祐樹 九州大学基幹教育院准教授 第8章
佐々木恭志郎 九州大学大学院人間環境学府,日本学術振興会特別研究員 第9章
安藤 花恵 西南学院大学人間科学部 准教授 第10章
目次
はじめに
序章 感性認知の射程:アイステーシスの心理学
第1節 アイステーシスの視点
第2節 感性とは何か
第3節 感性認知の研究の多様な視点とアプローチ
第1章 デザインと錯視
第1節 錯覚のフリスク
第2節 格子型錯視
第3節 コントラスト
第4節 方位情報
第5節 周辺視野と眼球運動
第6節 格子型錯視の生起メカニズム
第7節 いたずらな黒点はなぜ起こるのか
第8節 錯視からデザインへ
第2章 絵画における三次元空間の表現と知覚
第1節 はじめに:平面を空間として見るということ
第2節 網膜像のあいまいさ
第3節 奥行き手がかり
第4節 手がかりの統合
第5節 おわりに
第3章 液体の質感
第1節 はじめに
第2節 粘性を見る視覚の仕組み
第3節 透明な液体を見る視覚の仕組み
第4節 実物体の見え方を編集する光投影技術「変幻灯」
第5節 おわりに
第4章 日常音への感受性と脳波:時系列処理と感覚ゲーティング
第1節 はじめに
第2節 脳波・事象関連電位からみた脳活動
第3節 時系列パターンに対する事象関連電位:時間縮小錯覚を事例に
第4節 無用な長物は排せよ:感覚ゲーティング
第5節 おわりに
第5章 感じる時間のメカニズム
第1節 はじめに
第2節 内的状態と時間の感覚
第3節 外的な情報と時間の感覚
第4節 時間知覚のモデル
第5節 おわりに
第6章 絵画における時間
第1節 はじめに:研究の背景
第2節 絵画の中の時間・心の中の時間
第3節 時間印象と現実感覚
第4節 鑑賞の時間相-印象のマイクロジェネシス研究
第7章 美の原理
第1節 はじめに
第2節 黄金比は美か否か
第3節 フラクタル:混沌の中に潜む数理性
第4節 1/fゆらぎ:ランダムと単調のあいだ
第5節 美の神経科学
第6節 おわりに
第8章 気持ち悪さの心理学
第1節 気持ち悪さ
第2節 感情としての気持ち悪さ
第3節 嫌悪感としての気持ち悪さ
第4節 その他の気持ち悪さ
第5節 面白い気持ち悪さ
第9章 空間と感情
第1節 上下空間と感情の結びつき
第2節 空間-感情メタファが関与する現象
第3節 空間-感情メタファのメカニズム
第4節 左右と感情の結びつき
第5節 おわりに
第10章 パフォーマーの感性の熟達
第1節 パフォーマーとは
第2節 熟達における「技術」と「感性」
第3節 パフォーマーにおける感性
第4節 おわりに:感性を身につけるためには
おわりに