目次
はしがき
第Ⅰ部 英国における高齢者ケア
第1章 英国の高齢者
1 高齢者の概況
2 高齢期の暮らし
3 ケアを必要とする高齢者
第2章 高齢者ケアに関する行政と財政
1 高齢者ケア・サービスの基本的枠組み
(1)国と自治体
(2)自治体によるケア・支援の実施
2 高齢者ケア政策の主な展開
(1)労働党政権時代:利用者中心の質の高いサービス
(2)連立政権時代:自助・地域重視、公共支出削減の影
3 高齢者ケアのための自治体予算
(1)自治体の財政構造
(2)高齢者ケア予算の抑制
(3)緊縮財政の影響
4 保健医療サービスとの連携
(1)労働党政権時代の連携促進
(2)連立政権時代の連携促進
第3章 高齢者ケア・支援サービスの利用
1 ケア・支援サービスの利用
(1)自治体によるニーズの認定とケア・支援の実施
(2)利用者による選択
2 利用者に対する支援
(1)ケアプラン作成支援者の多様化
(2)判断困難者に対する支援
3 ケア・支援サービスの費用負担
(1)負担能力に応じた自己負担
(2)施設入所費用支払い繰延べ制度
第4章 在宅でのケア
1 施設ケアから在宅ケアへ
(1)コミュニティ・ケアの歩み
(2)コミュニティ・ケアの推進
2 在宅ケアの現状
(1)在宅ケア・サービスの概況
(2)在宅ケア・サービスの利用
3 在宅での生活自立への支援
(1)介護予防事業
(2)中間ケア
4 住まいへの対策
第5章 施設でのケア
1 施設ケアの概況
(1)ケアホームの体系
(2)ケアホームの概況
2 ケアホーム入所者の状況
3 入所者に対する保健医療ケア
4 ケアホームの経営・運営不安への対処
5 よりよい施設ケアのための取組み
第Ⅱ部 高齢者ケアの向上を目指す政策
第6章 ケア・サービスの質の向上
1 ケアの質の向上対策の歩み
(1)労働党政権の取組み
(2)連立政権による取組み
2 質の向上に向けての取組み
(1)ケア・サービス事業者による質の確保
(2)ケアの質委員会による監査等
(3)第三者組織による質の評価
(4)ケア従事者の質の確保
3 ケア・サービスの質の状況
第7章 ケア従事者の確保
1 ケア従事者の概況
(1)プロフィール
(2)就業状況等
2 ケア従事者の人材確保のための対策
(1)労働党政権による取組み
(2)連立政権による取組み
3 人材確保における課題
(1)厳しさを増す人材確保・定着
(2)外国人・移民ケア労働者
(3)ケア従事者の労働条件の改善
(4)ケア従事者の新しい役割
第8章 介護者への支援
1 介護者の現状
(1)介護者のプロフィール
(2)ケアの状況
2 介護者支援対策の枠組み
(1)介護者支援対策の歩み
(2)2014年ケア法に基づく介護者支援
3 介護者支援対策の実際
(1)介護者が受ける支援サービス
(2)民間団体による介護者支援事業等
第Ⅲ部 高齢者ケア改革の動向
第9章 ケア費用負担問題と2014年ケア法
1 ケア費用負担問題への取組み
(1)ケア費用負担問題の背景
(2)労働党政権による検討
(3)連立政権による見直し
2 法律委員会による検討
3 2014年ケア法の概要
4 2014年ケア法の実施
(1)新たなケア・支援ニーズ認定の実施等
(2)キャップ方式の延期
第10章 民間保険商品への期待と検討
1 民間保険商品への期待
2 民間ケア保険商品
3 エクイティ・リリース
コラムA 保守党サッチャー政権下のコミュニティ・ケア改革
コラムB 認知症対策の動向
コラムC Torbay地域における介護者支援事業
あとがき
注
参考文献・資料
索引
前書きなど
はしがき
本書は、日本の介護保険制度が重度化路線に転換し、家族介護者に対する支援が後退し始めたと感じた頃から約10年間の歩みを念頭におきながら、ほぼ同時期の英国における高齢者ケア政策の展開を再確認するために行ってきた調査研究の成果を集大成したものである。
(…中略…)
前置きが長くなったが、本書の構成は以下のとおりである。
第Ⅰ部は、英国の高齢者ケアになじみの薄い読者も念頭に置いた導入部分であるが、財政制約のためケア費用の負担、在宅ケア、施設ケア等の随所で問題が顕在化していることにも着目し、第Ⅱ部への橋渡しとしている。第Ⅱ部は、労働党ブレア政権以降の英国政府がサービスの質向上のために講じた政策と取組みを具体的に紹介したうえで、ケアを担う人材の確保難とその対策、インフォーマルなケアの担い手である介護者固有のニーズに着目した介護者支援策をとりあげている。第Ⅲ部は、長年の懸案であったケア費用負担問題の論点とその立法的解決である2014年ケア法の動向を紹介するとともに、キャップ方式が急遽延期された背景、現保守党政権が意欲を示している民間ケア保険の検討状況等を紹介してまとめとしている。
本書でとりあげたのはこの約20年間の英国における高齢者ケア政策の動向であるが、その時々に抱えていた懸案は現在も直面し、また、わが国も含め主要国に相い通じる課題でもある。類書が近年あまりない中で、英国の高齢者ケア政策を直近の動向まで視野に入れて体系的にまとめるべく試みたのが本書であり、比較政策論の観点から多少なりとも貢献できれば幸いである。