目次
日本語序文
第1章 序論
第2章 解放と分断初期の統一論議
第1節 解放以後の分断と左右対立
第2節 南北単独政府樹立と排他的統一方案
第3節 韓国の主要政党および社会団体の統一議論
1.南北の諸政党および社会団体代表者連席会議(4月連席会議)
2.左右対立の社会分裂
第3章 李承晩政権期の統一論議
第1節 第1共和国期の主要政党の統一論議
第2節 1954年ジュネーブ会談と勝共統一論
第3節 革新勢力弾圧と非政府レベルにおける統一議論の沈滞
第4章 張勉政権期における統一論議
第1節 第2共和国期における主要政党の統一論議
第2節 平和統一路線の提起
第3節 北朝鮮の「連邦制統一方案」提議
第4節 学生による統一運動の活性化
第5章 朴正煕政権期の統一論議
第1節 “先建設、後統一”路線の闡明
1.第3共和国期の主要政党の統一論議
2.政府による統一論議の独占
3.北朝鮮による「南朝鮮革命論」の推進
第2節 対話のある南北対立期:「7・4南北共同声明」と南北対話の模索
1.維新体制下における主要政党の統一論議
2.「7・4南北共同声明」と維新体制
3.北朝鮮の「祖国統一5大方針」闡明
4.維新体制下における民間レベルの統一運動
第6章 全斗煥政権期の統一論議
第1節 第5共和国期の主要政党の統一政策
第2節 「民族和合民主統一方案」と「高麗民主連邦共和国の創立方案」
1.韓国による「民族和合民主統一方案」提示
2.北朝鮮の「高麗民主連邦共和国創立方案」提起
第3節 第2の南北対話時代の開幕
1.水害救援物資の引き渡しと南北離散家族再会および芸術公演団の公演
2.国会会談、経済会談、体育会談の開催
第4節 民間レベルの統一運動の解氷
第7章 盧泰愚政権期の統一論議
第1節 盧泰愚政権期の主要政党の対北朝鮮・統一政策
1.民主自由党の統一政策
2.統一民主党の統一政策
3.平和民主党の統一政策
4.新民主共和党の統一政策
5.群小政党の対北朝鮮・統一政策
第2節 北方外交の推進と新しい統一方案
1.「7・7特別宣言」発表:朝鮮半島の冷戦構図の変化
2.「韓民族共同体統一方案」発表
第3節 南北当局間の対話の活性化
1.「南北基本合意書」の採択
2.「朝鮮半島非核化共同宣言」の発表
3.その他の南北対話
第4節 統一論議の拡大と百家争名
1.在野・市民団体の統一論議
2.学生統一運動の活性化
3.南北経済交流の始発点となった民間企業の対北朝鮮接触
4.社会文化界の対北朝鮮接触
第8章 金泳三政権期の統一論議
第1節 金泳三政権期の主要政党の統一政策
1.新政治国民会議の統一政策
2.自由民主連合の統一政策
3.その他の群小政党の統一政策
第2節 統一方案の再確立と朝鮮半島平和定着構想
1.「民族共同体統一方案」の闡明
2.4者会談を通した朝鮮半島平和定着の推進
第3節 対北朝鮮軽水炉支援と南北交流協力
1.北朝鮮核問題解決の努力と軽水炉支援
2.対北朝鮮人道的支援と韓国と北朝鮮の交流協力
第4節 南北首脳会談の推進と霧散
第5節 統一論議の多様化と小康局面
1.在野・市民団体の統一論議
2.学生統一運動の衰退
3.民間レベルの南北交流の協力拡大
4.社会文化界の対北朝鮮接触
第9章 金大中政権期の統一論議
第1節 金大中政権期の主要政党の統一政策
1.新千年民主党の統一政策
2.ハンナラ党の統一政策
3.他の群小政党の統一政策
第2節 太陽政策の推進
1.対北朝鮮和解協力政策の推進
2.対北朝鮮和解協力政策の成果
第3節 南北首脳会談および多様な南北対話
1.南北首脳会談と「6・15宣言」発表
2.南北対話の多様化と定例化
第4節 南北交流協力の本格的推進
1.金剛山観光事業の推進
2.開城工業団地開発事業の推進
3.南北交流協力の基盤造成
第5節 統一論議の活性化と多角化
1.多様な民間主体の交流協力増加
2.社会文化界の対北朝鮮接触
第10章 盧武鉉政権期の統一論議
第1節 盧武鉉政権期の主要政党の統一政策
1.開かれたウリ党の統一政策
2.第17代大統領選挙主要候補らの統一・安保政策
3.群小政党の統一政策
第2節 「平和繁栄政策」の推進
1.「平和繁栄政策」の構想
2.「平和繁栄政策」の成果と今後の課題
第3節 北朝鮮の核問題の平和的解決のための努力
1.北朝鮮の核危機の高調と政府の対応
2.平和的解決の足掛かり:「9・19共同声明」と「2・13合意」
3.北朝鮮の核無能力化措置の進行
第4節 第2次南北首脳会談の開催
1.第2次南北首脳会談の意義と評価
2.「10・4宣言」の各項目の内容と評価
3.「10・4宣言」の後続措置
第5節 交流協力の拡散と「南北関係発展法」の制定
1.開城工団事業の着工と運営
2.金剛山観光事業の継続
3.「南北関係発展法」の制定
第11章 李明博政権期の対北朝鮮・統一政策と課題
第1節 相生と共栄の対北朝鮮政策のビジョンと原則
第2節 相生と共栄の対北朝鮮政策の推進課題
第3節 相生と共栄の対北朝鮮政策に対する評価と今後の課題
第12章 結論
付録 解放以後の韓国諸政党の統一政綱・政策
訳者あとがき
前書きなど
日本語版序文
1945年8月15日、連合軍に対する日本の降伏で朝鮮民族は国権を回復した。しかし、解放の喜びもつかの間、朝鮮半島は南と北に分断し、各々の地域に政府を樹立し、現在に至っている。
その間、戦争はもちろんのこと数えきれない程の衝突と対決が続いてきた。このような朝鮮半島が葛藤の次元で見れば分裂を受容し、定着していくように見受けられる。外部から眺める時、朝鮮半島は休戦ラインを境界として数多くの兵力と武器が対峙している不安な姿として映るであろう。とくに、2010年に西海で発生した天安艦撃沈と延坪島に対する北朝鮮の砲撃事件などは相変らず朝鮮半島が戦争の可能性を抱いている危険な地域であるという認識を植え付けるのに充分である。
しかし、分断以後、韓国と北朝鮮は各々の方式で統一のために努力し、現在まで続いている。南北の住民の大部分は、たとえその認識と方式において多くの差異を見せてはいるが、統一に対する当為性とその実現可能性に対しては確固たる意志を持っている。韓国の場合、歴代政権ごとに統一に対する政策を国民に提示し、これに対する支持を受けて政策を実践してきた。つまり、韓国国民にとって統一は理想的で抽象的な未来の目標ではなく、実現しなければならない具体的課題である。これは北朝鮮の住民も同じだった。
ただし、長い間に互いに異なるイデオロギーと体制で生活してきたために、南北の統一に対する認識と方法論は大きく異なる。韓国の場合にも歳月の流れにより統一政策において様々な変化を経験した。過去、東西冷戦期には反共を最優先目標にしたので統一政策もやはり強硬かつ硬直した側面が多かった。しかし、脱冷戦以後、韓国の対北朝鮮観や統一政策はかなり緩和され、ある程度自由な状態で、様々な方式で北朝鮮との統一対話を摸索している。
本書は1945年の分断以後から2011年現在に至るまで韓国の歴代政権と各政党が主張した統一方案と対北朝鮮政策、そして北朝鮮の統一方案を時系列的かつ体系的に分析したものである。ここには制度圏以外の主張も把握するために、群小政党と社会団体の統一議論まで含めて整理した。
このような点で、本書は保守か進歩かというどちらか一方の主張でない韓国社会全般の統一議論の変遷を客観的な視角で集大成したという意味を持つ。したがって、韓国社会でその間に研究され実際に実施した統一関連の様々な政策と事件を総合的に整理した資料的性格が大きい。
日本語版発刊に際して、日本人にとって朝鮮半島問題はどんな意味を持つかを考えてみた。日帝強制占領期に生まれた筆者としては、植民地経験と朝鮮戦争、南北首脳会談などをすべて経験しながら自然に統一問題を歴史的観点から眺める傾向が形成されてきた。これに比べて、韓国の若い世代は現在、自身の個人的立場で統一問題を眺める打算的傾向が強い。韓国の若者たちがそうであるなら、外国人は朝鮮半島の統一問題が自国に及ぼす影響の範囲でしか考えることはできないであろう。
このような外国人の範疇には日本人も含まれる。しかし、歴史的、地理的に我々と密接な関係にある日本人には朝鮮半島問題に対して他の外国人とは異なり特別な関心を持ってくれることを期待する。これは現時点で南北朝鮮の分断の責任を日本に賦課しようというのではない。ただ、韓国と共に東北アジアの未来を導く中心国家として、日本が朝鮮半島問題に対して歴史的脈絡から一定の責任意識を持ってみて、より成熟した韓日関係と平和な東北アジアを共に作り出すことを願うという意味である。
朝鮮半島の統一という変化は南北朝鮮だけでなく日本と中国そしてロシアなどにも少なくない影響をあたえる転換期的事件になるだろう。したがって、当事国の韓国がどんな統一政策を持ってどのように統一を準備するのか理解することは日本人にも重要な事案であることに相違ない。したがって、本書が朝鮮半島の平和的統一と東北アジアの平和的共存を望む賢明な日本人たちに良い参考資料として機能できるように願うばかりである。
韓国に対して格別の愛情を示して、これまで本書の日本語版出刊を支援して下さった立命館大学に感謝申し上げる。そして、企画を主導してきた李虎男博士、翻訳のために労を取ってくれた国際関係学部の中戸祐夫教授、そして出版を引き受けて下さった株式会社明石書店の黒田貴史氏にも感謝の意を申し上げる。彼らの関心と支援がなければ日本で本書を発刊することはできなかったであろう。
日本語版の発刊にあたって、韓国語版を発刊した2008年9月以後の事実を新しく追加・収録したので、日本語版は韓国語版をはるかに凌駕する内容となった。皆さんの支援のおかげでより良い成果をあげることができた。本書によって日本の多くの読者諸氏が朝鮮問題に対してより多くの理解と関心を持つことになればと思う。同時に、本書を読んだ人々が朝鮮半島の統一のために大いなる支援者になってくれれば望外の幸せである。
ソウル平和問題研究所にて 2011年2月 著者 申栄錫