紹介
近世出版現場の生々しい痕跡を伝える「板木」から、当時の出版事情に迫る。
第一人者が初めてまとめた、「板木」論集成。
従来注目されることのなかった板木を学術史料として位置付け、
出版研究に新しい視点を導入した成果の数々。
日本出版史必須の基本論考が遂にまとめられた。
【二十年近く板木に関わって来てつくづくと思うのは、そこには近世出版現場の生々しい痕跡が残っている、ということであった。それは、板木の仕立て方であったり、丁の収め方であったり、相版の際の板木の分け方であったり、板木再利用の有様であったり、入木のやり方であったりするのだが、それらは近世の本屋や出版に携わった職人たちが何を考え何をして来たかを私たちにストレートに語ってくれるもので、従来の出版研究がベースとして来た「版本」からは絶対に見えてこない情報である。それらの情報を手にして版本に臨んだ時、私たちはまた、近世の出版について新たな視点を持つことが可能となるに違いない。】……あとがきより
目次
第一部●板木の意義
京都と古典文学―出版を中心に―
1 出版都市京都 2 藤井文政堂の板木
3 失われた板木 4 板木の学術的意義
第二部●『おくのほそ道』の板木
1 『おくのほそ道』板木の旅路
2 『おくのほそ道』蛤本(はまぐりぼん)の謎
1 蛤本の由来 2 板木の仕立て方
3 板木由来の乱丁本 4 小蛤本『おくのほそ道』
5 『おくのほそ道』の題簽
第三部●「芭蕉」という利権
1 小本『俳諧七部集』
はじめに 1 安永三年江戸京五軒版
2 文化五年再刻京三軒版 3 文化五年京江戸五軒版
4 安政四年江戸大坂九軒版 付 寛政版七部集の配列
2 小本『俳諧七部集』の重板
はじめに 1 重版A本
2 重版C本 3 重版B本
4 重版D本 5 掌中俳諧七部集
6 天保校正俳諧七部集 7 掌中本覆刻版
8 弘化四年版横本 9 弘化二年版袖珍本
10 嘉永四年版横本 おわりに
3 『七部大鏡』の版権
はじめに 1 『西国俳諧七部集』の一件
2 『七部大鏡』の版権 付『続猿蓑注解』
3 『芭蕉翁句解参考』 おわりに
第四部●入木(いれき)
1 梅竹堂会所本の入木撰
1 会所梅竹堂 2 梅竹堂会所本の入木撰
2 『芭蕉翁発句集』の入木
はじめに 1 『おくのほそ道』と『芭蕉翁発句集』
2 『芭蕉翁発句集』の板木の入木
3 板木二題―厚さ・入木―
1 板木の厚さ 2 入木
4 『山家集抄』の入木
はじめに 1 版本書誌
2 残存板木一覧 3 板木の伝来
4 成立 5 『山家集抄』の入木
6 他の例
第五部●版権移動・海賊版・分割所有
1 『笈の小文』の板木
1 『笈の小文』の版本・板木 2 『芭蕉翁/奥細道 拾遺』
3 『笈の小文』の版権 4 『発句題林集』のこと
5 平野屋版『笈の小文』は初版か
2 『奥細道菅菰抄』の板木
はじめに 1 『奥細道菅菰抄』の版本と板木
2 天明の大火と井筒屋の罹災 3 大火後の井筒屋
おわりに
3 『七部解』と『七部木槌』
4 『冬の日注解』の板木
1 『冬の日注解』の版本 2 『冬の日注解』の板木
3 刊記の不審
5 竹苞楼の板木―狂詩集・狂文集を中心に―
はじめに 1 板木により判明する事実
2 『太平楽府』の板木 3 『太平楽府』の重版の一件
4 『太平楽府』の版本
6 板木の分割所有
はじめに 1 好古小録 2 好古日録
3 禁秘御鈔階梯 4 茶経
5 茶経詳説 6 百家―行伝
7 秘伝花鏡 8 謝茂秦詩集
おわりに
7 『四鳴蝉』の板木
第六部●板木は語る
1 佛光寺の板木
2 慶安三年版『撰集抄』の板木
はじめに 1 『撰集抄』の板木
2 慶安三年版の板木 おわりに
3 俳書の板木
はじめに 1 『花段綱目』の内容と諸版本
2 『花段綱目』の板木 3 俳書の内容
4 『花段綱目』三刻本の版元
4 一茶等「七評ちらし」の板木
1 十評発句集 2 一茶等「七評ちらし」
3 一茶・石海両評奉額句合
あとがき