目次
まえがき
謝 辞
序 章
1 ホモソーシャルな欲望
2 性の政治学と性の意味
3 性か歴史か?
4 本書が論じるもの
第1章 ジェンダーの非対称性と性愛の三角形
第2章 恋する白鳥
――シェイクスピア『ソネット集』の例
第3章 『田舎女房』
――男性のホモソーシャルな欲望の解剖モデル集
第4章 『センチメンタル・ジャーニー』
――セクシュアリズムと世界市民
第5章 ゴシック小説に向けて
――テロリズムとホモセクシュアル・パニック
第6章 代行された殺人
――『義とされた罪人の手記と告白』
第7章 テニスンの『王女』
――七人兄弟にひとりの花嫁
第8章 『アダム・ビード』と『ヘンリー・エズモンド』
――ホモソーシャルな欲望と女性の歴史性
第9章 ホモフォビア・女性嫌悪・資本
――『我らが共通の友』の例
第10章 後門から階段を上って
――『エドウィン・ドルードの謎』と帝国のホモフォビア
結 び 20世紀に向けて
――ホイットマンのイギリス人読者たち
注
訳者あとがき
参考文献
索 引
前書きなど
本書を今読み返して、思うに、いかにむこうみずな悦びに支えられて『男同士の絆』が執筆されたのか、読者には想像もつかないに違いない。当時、私が使っていたのは(「ポータブル」とはいえ重さ35ポンドもする)オズボーン・コンピュータ。その小さな画面と言ったら、フォルクスワーゲン・ビートルの、霜とり不可能なフロントガラスを思い出させるような代物だった。当時の夜食は、テイクアウト用のテカテカした箱に入った二度焼きのポーク。夜が更けるとそれを、ミツバチの巣のように活気にあふれるバンティング・インスティチュートの、灯りをともした小さな部屋で食べたものだった。私の真言(マントラ)は「食事の準備に追われるよりはましよね」――職が少なく、フェミニズム批評が特に難問を抱えており、しかも終身雇用権など手にする見込みのなかったあの頃、この真言を唱えると、妙に明るい気分になれたものだった。当時の私は、何事に対してもまったく自信がもてなかった。それでも、本書を執筆することが冒険に満ちた名誉ある行為に思われない日は一日たりともなかったのである。
私は主として〔フェミニズムとアンチ・ホモフォビアという〕ふたつの立場が共闘しうる土台を模索するために『男同士の絆』を執筆した。まず読者として念頭に置いたのは、他のフェミニストの研究者たちである。本書の執筆に取りかかった時、フェミニズムという学問はひとつの領域の研究としかみなされておらず、フェミニズムは他の領域で充分に活かされているとは言い難かった。そのため、フェミニズムの観点から比較的わずかとはいえ力強い公理に拠りつつ、あらゆる領域の学問を再構築することが可能であるばかりか、急務であるとも考えられていたのである。私は、脱構築の立場から極めて能動的で厳密な読みを心掛けており、アクティヴィストの提唱するつむ……
[「まえがき」冒頭より]