目次
序文
日本語版の出版によせて
第1回講義 日本による韓国史歪曲の出発点としての高宗時代
歴史の真実を探して/日本の侵略主義による韓国史歪曲/韓国の強制的併合はまさに征韓論の実現/高宗時代が歪曲の出発点/歪曲された儒教の悪政/日本の経験とは別の歴史/十四世紀後半の民の誕生と朝鮮王朝/民生の向上に全力投球した儒教王政/公論を先立たせた朝鮮中期の儒教/十六〜十七世紀の長期自然災害による王政の乱脈/外界衝撃(Extra-Terrestrial Impact)による大災乱/神の登場をもたらした外界衝撃/歴史記録で確認される外界衝撃/天変地異に対する人類社会の対応/儒教の近代志向性と朝鮮中華主義/蕩平君主と「民国」/十九世紀の守旧勢力の反動に対する民衆の抵抗
第2回講義 韓国の開国に加えられた日本の暴力と歪曲
十九世紀東アジアの危機/高宗の開化政治志向性/近代化の成果に対する日本の牽制/高宗時代の真実を求めて/雲揚号事件の歪曲/朝鮮が自ら結んだ江華島条約
第3回講義 日清戦争前後に行なわれた日本の暴力
国際法と条約に関する情報収集/大韓帝国の国際法に対する認識/国際法遵守の目標は永世中立国/清国への出兵要請は袁世凱が強要したもの/内政干渉の拒否に対して景福宮に武力侵入/王が作成した王妃の一代記/景福宮の裏に建つ洋館/一年前に試みられた王妃殺害作戦/日清戦争の結末と王妃殺害
第4回講義 韓国の自主的近代化に対する中国・日本の妨害
(1)近代化事業の方向性を中心に
近代韓国の自力近代化の可能性/武器購入と新式貨幣制度の準備/景福宮内に設置された最初の電気施設/光武改革の開始/新式金融制度の導入/皇国協会と独立協会/大韓天一銀行の発足と中央銀行の設立準備/「利権侵奪」の実相
(2)ソウル都市改造事業を中心に
大韓帝国の国土開発計画と全国鉄道網/ソウルの測量基点/ソウルの都市改造事業/放射線状の道路と記念物の設置/独立門と圜丘壇/都心の市民公園/放射線状道路体系の中心に慶運宮を建てて/近代化事業の成果と挫折
第5回講義 日露戦争と日本の韓国主権奪取工作
都市改造事業が否定する植民地近代化論/近代的国家予算制度の発達/純宗皇帝の署名偽造/署名を偽造した者は誰か/主権奪取条約の欠格・欠陥/略式条約を正式条約に偽装/名称が抜けた「乙巳保護条約」/代役で行なった高宗皇帝の強制退位式
第6回講義 韓国併合の強制と不法性
日本の韓国併合条約の準備/皇帝が署名していない併合条約
特別講演 東アジアの未来──歴史紛争を超えて
序論
西洋勢力が来る前の東アジア各国の中華主義
国際法受容後に展開された各国中華主義の変形的状況
日本のアジア盟主提唱と二十世紀東アジア国際関係の悲劇
二十一世紀の巨大中国の中華意識と東アジア国際関係の脅威
結論 東アジアの国際観と国際関係再確立の道
訳者あとがき
年表
索引
前書きなど
日本語版の出版によせて
日本と韓国との間には両国の歴史問題において、多くの対立が見られる。「善隣友好」を期待するのが難しい状況が頻繁に起こっている。私は、相互理解と相手方に対する信頼だけが両国の本当の友好関係をもたらすと信じている。昨年末に日本のある週刊誌の記者が私に電話で靖国神社の問題に対する意見を尋ねたとき、私は少しためらったが、こう答えた。靖国の問題はもはや隣国の知識人がいろいろ言う段階ではないようです。日本の中にも問題の核心を正しく見ている知識人が多いので、彼らを中心に日本社会が自ら解決すべき問題ではありませんか、と。
日本と韓国の両国は、二十世紀初頭の「不幸な」歴史に対する認識の差を解決しなくては、二十一世紀の歴史を十分に導いていくのは難しいだろう。ところでこのような問題は加害者の側で突破口を開いてくれなくては解決するのが難しい。被害者がどんなに声をあげても加害者がこれを無視すれば、感情の溝だけが深くなるものだ。両国の間で年月を経た過去の問題は、日本の知識界や政界が被害者である韓国の声を正しく聞こうという決断をしたとき、初めて解決できるようになる。東京大学哲学センターが私に明治日本の韓国侵略史を講義してくれと要請してきたとき、私は両国の過去問題が今や新しい局面を迎える糸口をつかんだように受け取った。講義の成果は微々たるものだが、招請自体が持つ意味はそのように大きく感じられた。このような意義を刻んでおこうと、本の題名に「東大生たちに」という表現を使った。
私はこの講義で、日本の学生たちに明治日本の政治指導者たちが韓国でどんなことをしたのかを詳細に知らせるということに力点をおいた。日本人たちが過去の韓日の関連歴史を誤って知っていることが、過去問題の解決を難しくしている根本原因であるから、若い学生たちには歴史の真実を正しく伝えたいと思った。彼らまで明治の政治指導者たちによって韓半島で起こされた悲劇の歴史を知らないとすれば、両国の問題は永遠に解決できなくなるだろう。私は日本の大学で初めて成される歴史の真実の公開が新しい歴史をつくる種になることを願った。
二〇〇六年四月三日 著者