目次
はじめに
1 女性は太陽だった?——原始・古代
2 女帝の時代——古墳時代
3 大陸文化とともに「男尊女卑」が——律令時代
4 女流文学の時代——平安時代
5 自立していた女性たち——鎌倉・室町・桃山時代
6 家制度に縛られた武家女性たち——江戸前期
7 身分制度の中の庶民女性——江戸後期
8 自由への期待と揺り戻しと——明治初期
9 明治憲法下の女性たち——明治中期
10 家父長制の下で——明治中期
11 日本の産業を支えた娘たち——明治・大正
12 社会の壁に立ち向かった女性たち——明治・大正・昭和初期
13 婦人参政権を獲得するまで——大正・昭和初期
14 戦争とジェンダー——昭和初期・中期
15 踏みにじられた性——昭和初期・中期
16 敗戦——新しい出発——昭和中期(1945〜46年)
17 新しい「日本国憲法」の誕生——昭和中期(1946年)
18 男女平等をめざす改革——昭和中期(1945〜50年)
19 逆コースの中でのたたかい——昭和中期(1950年代)
20 「高度成長期」の女性の悩み——昭和中期(1960年代)
21 力をつけた普通の主婦たち——昭和中期(1960〜70年代)
22 女たちの異議申し立て——昭和後期(1970年代)
23 男女平等への世界的潮流——昭和後期(1970年代)
24 差別撤廃への国内法整備——昭和後期(1980年代)
25 「男女共同参画社会」時代がやってきた——平成(1990年代)
26 「女性差別撤廃条約」を生かして!——平成(2000年代)
女性史年表(近現代)
出典一覧
参考文献
おわりに
前書きなど
はじめに
私たちの祖母や曾祖母たちの多くは、女は男に従えと常に言われ、結婚相手さえ親の意のままという苦い経験をしてきました。未だに自分の意思を持てずに、世間の顔色を見て行動を決定する人も少なくありません。それこそが家父長制が女性に押し付けた「性役割」の産物なのです。
私たちは、この本の題名を「日本女性史」ではなく「ジェンダーからみた日本女性の歴史」としました。ジェンダーとは生まれ持った性別ではなく、社会や歴史によってつくり上げられた「性役割」のことで、「男は強く勇敢で積極的、女は弱く優しく消極的」というような考えは、この「性役割」から生まれてきたものです。
最近、憲法24条への風当たりが強くなってきました。24条のうたう「家族の中の個人の尊厳と男女の平等」が、行き過ぎた個人主義や利己主義の風潮を生んだとして、「家族や共同体の価値を重視するように24条を見直すべきだ」と、声高に主張されているのです。「家族を大切にしてどこが悪いの?」という声も聞こえてきそうですが、「個人の尊厳と男女の平等」よりも「家族や共同体が大切」という考え方には、やはり警戒が必要ではないかと私たちは考えています。なぜならその考え方のために多くの女性が苦しんだ「歴史」が、警戒せよと教えてくれるからです。日本女性の歴史は、家父長制の浸透の歴史でもあり、家父長制がつくり上げた「性役割」の歴史でもあり、またそれとのたたかいの歴史でもあります。
この本を読んでくださるみなさんには、差別という高い壁にはばまれながらも、平等に向かってめげずにたたかった日本の先輩女性から、勇気を受け取ってほしいと思います。同時に、改憲を主張する人々の言う「家族や共同体の価値」と、家父長制との関係、そして戦争・国家との関係を読み取ってくださることを切に願っています。