目次
序文
第一章 精神のモノカルチャー
第一節 「消滅した」知識体系
第二節 分断の裂け目
第三節 「雑草」として破壊される多様性
第四節 「奇跡」の木と「奇跡」の種子
第五節 「緑の革命」と「奇跡」の種子
第六節 モノカルチャーの持続不可能性
第七節 知識の民主化
第二章 生物多様性——第三世界の視点
第一節 「多様性の危機」
第二節 生物多様性に対する主要な脅威
第三節 生物多様性の浸食の影響
第四節 第一世界の生物帝国主義と南北対立
第五節 生物多様性保全に対する支配的アプローチの限界
第六節 生物帝国主義から生物民主主義へ
第三章 バイオテクノロジーと環境
第一節 序論
第二節 バイオテクノロジーと生物災害
第三節 バイオテクノロジーと化学災害
第四節 バイオテクノロジーと生物多様性
第五節 バイオテクノロジーによる代替品と第三世界の経済的地盤沈下
第六節 バイオテクノロジー、私有財産化、中央集権化
第七節 バイオテクノロジー、特許、生命の私的所有
第四章 種子と糸車——技術開発と生物多様性保護
第一節 序論
第二節 技術開発と持続可能性
第三節 多様性と生産性
第四節 種子の保全と糸車
第五節 結び
第五章 生物多様性条約——第三世界の視点からの評価
付録 生物の多様性に関する条約
訳者あとがき
原注
訳注
人名索引
事項索引
前書きなど
本書は、Monocultures of the Mind: Perspectives on Biodiversity and Biotechnology, Vandana Shiva, Zed Books: London and New Jersey & Third World Network: Penang, Malaysia, 1993の全訳である。原題は、第一章と同じ『精神のモノカルチャー』である。第二章と第三章の初出は、それぞれ第三世界ネットワークが地球サミット(一九九二年)に際して出版したパンフレットで、それが今回単行本に収録されたものだ。 まず、著者の横顔を紹介しておこう。ヴァンダナ・シヴァは、一九五二年にインドのデーラドゥーン(ヒマラヤ山脈のふもと)に生まれた。物理学と科学哲学を専攻し、一九七八年に博士号を取得。この方面の素養は、著書でドナルド・オースター、トーマス・クーン、エヴリン・フォックス・ケラー、サンドラ・ハーディング、キャロリン・マーチャント、ジェローム・ラヴェッツなど科学史・科学哲学関係の引用がしばしば見られることからもうかがえる。バンガロールにあるインド経営研究所(Indian Institute of Management)で三年間研究に従事したのち、一九八二年に故郷のデーラドゥーンに科学・技術・自然資源政策研究財団(Research Foundation for Science, Technology and Natural Resources Policy)を設立し、今日までこれを主宰している。この財団は、草の根レベルの環境運動を支援する研究者のネットワークで、森林・林業、水資源開発、生物多様性の保全など、自然資源の利用にかかわる諸問題に取り組んできた。エドワード・ゴールドスミスが主宰する英国の著名な環境雑誌The Ecologistの編集委員もつとめている(同誌の一九八九年七・八月号にシヴァのインタビューが出ている)。また、国連大学のコンサルタントでもあり、共著『エコロジーと生存の政治学』は国連大学出版局から出されている。 彼女は郷里の近くで始まった森林保護の「チプコ運動」に参加するなかで環境問題への問題意識に目覚めた。インドの環境問題に取り組むグループとともに、住民参加型の調査・研究活動を行うかたわら、ガット(GATT)に反対する運動と、農民による種子の管理・流通センターの運営に尽力している。森林問題、水問題、農業と遺伝子資源問題、世界銀行問題などをめぐる環境問題キャンペーンで中心的役割を演じるとともに、その理論的支柱でもある。フェミニスト理論家としても知られ、インドの女子労働を研究するドイツの社会学者マリア・ミースとの共著『エコフェミニズム』がある。(後略)訳者あとがき