目次
第1章 日本と韓国のドメスティック・バイオレンスをめぐる状況
韓国の状況
1 家庭暴力研究の概要と実態把握…キム・ゼヨップ
2 家庭暴力被害女性への支援体系…パク・ヨンラン
3 家庭暴力をめぐる司法システム…イ・ミョンスク
4 家庭暴力被害女性のためのNGO活動と女性運動…ジョン・チュンスク
日本の状況
1 ドメスティック・バイオレンスの実態把握に関する研究動向…庄司洋子/渋谷敦司/妹尾栄一/佐々木典子
2 女性に対する暴力への対策の現状…原ひろ子/齋藤誠/湯澤直美
3 民間団体と女性運動の取り組み…波田あい子/高畠克子/亀田温子
第2章 日本と韓国のドメスティック・バイオレンスの実態と意識
1 韓国の家庭暴力対策関連二法制定以後における家庭暴力研究…ビョン・ファスン/パク・ヨンラン/キム・ゼヨップ/ファン・ジョンイム
2 日韓比較データ…汐見和恵/三具淳子
第3章 韓国におけるドメスティック・バイオレンスへの取り組み
1 韓国の家庭暴力対策関連二法と日本のドメスティック・バイオレンス防止法…齊藤誠
2 加害者対策と医療・教育プログラム…妹尾栄一
3 暴力被害女性のための福祉システム…湯澤直美
4 「女性1366」—女性のための危機電話網—…波田あい子
5 民間団体(NGO)と女性運動…高畠克子/波田あい子/亀田温子/佐々木典子
第4章 ドメスティック・バイオレンスの克服に向けて
1 日本のドメスティック・バイオレンス防止法施行を迎えて…波田あい子/原ひろ子
2 暴力被害女性への支援と社会福祉…湯澤直美
3 加害者更正プログラムの課題と展望…妹尾栄一
補論 ドメスティック・バイオレンス調査の課題…渋谷敦司
おわりに…ビョン・ファスン
前書きなど
日韓比較の観点から、ドメスティック・バイオレンスの防止にとって有効な社会システムのあり方を探ることを主題に共同研究を思い立つにいたった理由は、以下の通りである。 まず、我が国と同様に儒教文化の影響の強い家族観を持つ韓国が、女性に対する暴力にかかわる三つの法の制定を、一九九七年までに実現させていたことがあげられる。さらに、韓国での先例は欧米諸国の例とは異なるかたちで、私たちにとって学ぶことが多いであろうという期待感も研究への意欲を大きくさせてくれるものだった。共同研究の計画を始めたのは一九九九年初頭で、ちょうど日本では参議院共生調査会、総理府男女共同参画審議会・女性に対する暴力部会、全国女性シェルターネットなどで、ドメスティック・バイオレンス防止法の必要性が論され始めたころだった。一方、韓国内では一九九八年七月に施行となった家庭暴力対策関連二法の効果等について、人々の注目が集まっていた時期だった。わたしたちは、一九九七年三月に日韓・女性に対する暴力プロジェクト研究会をつくり、両国の研究者たちと交流を重ね、研究に着手した。 二〇〇一年三月三日には、韓国の共同研究メンバーを東京に招聘し、研究成果の中間発表とシンポジウムを開催した。このシンポジウム開催の数日前、同年四月六日に成立することになる我が国のドメスティック・バイオレンス防止法案「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」の骨子が公表された。急遽、韓国チームにその骨子内容を説明し、シンポジウムの論議に備えたという場面も思い出される。 以上のように、本書の元となった日韓共同研究は一歩先んじる韓国と遅れて取り組みを始めた日本という関係において、双方の国で新しいシステムづくりを行う試行錯誤の真っ最中という状況下で、計画段階の交流を含め、一九九九年から二〇〇一年の三カ年にわたって行ったものである。(後略)はじめに 編著者