目次
日本のみなさまへ
序文
はじめに
第一章 インドの位置付け
第二章 インドの戦略エリートの世界観
第三章 「イエスといえないインド」
第四章 インド国内では何が起きているか
第五章 軍事大国としてのインド
第六章 核保有国としてのインド
第七章 インドとパキスタンはなぜ対立するのか
第八章 アジア大国としてのインド
第九章 インドとアメリカ
第十章 台頭するインド
追 補 9・11とインド
訳者あとがき
注
索引
前書きなど
(前略) コーエン氏によるこの本は、アメリカの視点からインドを描いた点に最大の特色がある。アメリカでは、インドを長年にわたって巨大で無能な国家ととらえる傾向が強かった。しかし、こうしたネガティブなインドのイメージは過去のものとなりつつあり、今や、日本と中国に並んでアジアの大国の一つになろうとしている。その多元的で政教分離的な民主主義は、これまでは抑圧されてきた低位カーストやエスニック集団の政治的な台頭をもたらしており、一九九一年に開始された経済自由化は加速化しつつある。経済は六%台の成長を続け、貿易輸出額も三〇〇億ドルをこえている。その軍事力は侮りがたいものがある。兵力は世界第三位であり、航空母艦を擁し(二隻目を取得予定)、その核ミサイルがアジア全域に到達できる能力を備えようとしている。 本書は、インドの核実験、一九九九年のパキスタンとの戦争、それに経済的な躍進を踏まえて、政治・戦略的な国家(パワー)としてのインドにはじめて総合的な評価を加えたものといえる。コーエン氏は、インドの「台頭」について、国内的・国際的な要因を検証するとともに、インド人の世界観を形成しているその社会構造や伝統を検討した上で、インドとアメリカをはじめ、パキスタン、中国、日本などとの関係を見すえようとしている。特に、アメリカの対印政策は台頭するインドに対して調整し直す必要があると強調しており、同盟関係にはいたらないまでも、従来と比べてもっと密接な関係こそが両国にとって望ましいことであると結論付けている。(後略)訳者あとがき