目次
1 チェコとスロヴァキアのなりたち
国土と住民—国境線はどうやって決まった?/チェコ人とスロヴァキア人—兄弟? それとも夫婦?/似ているけれども違う,違うけれども似ている—チェコ語とスロヴァキア語の不思議な関係/キュリロス,メトディオス,ヴァーツラフ—死んでもまだ忙しい「国民的聖人」たち/カレル4世—プラハに生まれた皇帝の壮大な夢/ほか
2 チェコスロヴァキアの誕生,解体,再生,そして……
第一次大戦とチェコ人・スロヴァキア人—戦乱の中から生まれた共和国/お城の大統領—マサリクと第一共和国/「保護領」と「独立国」—一つの戦争,異なる記憶/共和国の再興をめざして—ベネシュ大統領の苦悩と限界/「チェコスロヴァキアの道」の先に見えたもの—社会主義化の過程とその要因/ほか
3 経済・社会
経済の現状—市場経済を計画的に作りだすということ/工業国の伝統は今も—チェコ経済の牽引車たち/バチャの靴—知られざる世界的ブランド/チェコの教育制度—ドクトルがたくさんいるわけ/放送—テレビは誰のものか/プレス—「表現の自由」を求めて/ほか
4 暮らしの風景
伝統行事—年中行事ミニカレンダー/食生活—やはり家庭の味が最高/地方生活のひそやかな愉悦—村の風物詩を見に行く/余暇の過ごし方—うらやましい別荘暮らし
5 文化・芸術
国際色と郷土色と—中世・近世の文化/民衆文化の一大モチーフ—スロヴァキアのナショナル・ヒーロー・ヤーノシーク/「ネイション」と「コスモポリタン」—19世紀の造形芸術/モダンの終焉—20世紀アートの推移/建築という巨大なる叙情詩—チェコの20世紀建築/ほか
前書きなど
チェコとスロヴァキア。この二つの国の名前をこうして並べる時、私はどうしてもある種の「おさまりの悪さ」を感じてしまう。一〇年前まで、両国は一つの国だったので、「チェコスロヴァキア」と一気に呼んでいた時の習慣がまだ抜けきっていないからだろう。使われている言語も非常に近いし、生活様式や習慣にもそれほど大きな違いはない。それにどちらも小さい国で、面積は両方合わせて日本の三分の一しかない。人口はチェコ共和国が一〇二九万人、スロヴァキア共和国が五三八万人(ともに二〇〇一年)で、これまた両方合わせても日本の八分の一程度である。 それにもかかわらず、この二つの国は多彩な「顔」を持っている。チェコでは何といっても、今やヨーロッパ有数の観光都市となったプラハの人気が高く、その不思議な美しさは人々をひきつけて止まない。一方スロヴァキアには、プラハのようなメジャーな観光地はないが、素朴な景観を残す街並みや、どことなく大陸的気分の漂う山岳風景などが印象的で、一度この国を訪れただけでファンになってしまう人も多い。そして、個性溢れる音楽や文学などをきっかけに、これらの国々に興味を持つようになった人も多いだろう。また、近い将来、ヨーロッパ連合(EU)に新規加盟することもほぼ確定しており、その意味でも今後ますます注目されていくと思われる。この二つの国をまとめて紹介しようというのが本書である。(後略)はじめに 編者