目次
はじめに
第1部 明日は国民投票! その前に
・なぜいま憲法改正なのか
・「国民投票」を知っていますか
第2部 もっと知ろう、憲法のこと
・「立憲主義」を知っていますか
・日本国憲法はやわかり
第3部 自分の頭で考える「憲法改正」
・改正案を読むヒント
・「押しつけ論」と九条の問題
・いまの憲法のどこが不十分か
・もしも憲法が変わったら
前書きなど
護憲改憲を論じる前に、必ず知っておくべきこと —「はじめに」より
憲法改正論議がメディアをにぎわしています。世論調査では改憲に賛成する人が6割を超えたと報道した新聞もあります。
しかし私には、残念ながら政治家も含めて多くの人々が、憲法の本質をわかって議論に参加しているとは思えません。
憲法の根本的な意義・役割とは何か。それは「権力に歯止めをかける」ということです。そのことは小学校でも中学でも高校でも、教えられていません。教科書にも出てきません。しかしこれは、憲法学のもっとも基本的な常識なのです。
「法律は国民を縛り、憲法は権力を縛る」。だから、日本国民に憲法を守る義務はありません。そして、ときに憲法は、民主主義を制限することもあります。
そういう、憲法学の最小限の常識を知らずに、子々孫々まで影響のある改憲を行おうとすることは、たいへん危険なことに思えます。
また、日本には改憲の手続きを定めた国民投票法も存在しません。改憲のための国民投票の「国民」が誰をさすのか、それらすべてを、これから法律をつくって決めるのだということを、あなたは知っていますか。
この本は、そういう憲法に関わる必要かつ最も基本的な常識を説いたものです。改憲・護憲を論じる前に必ず知っていなければならないことだけを述べました。そして最後に、私自身の意見も書きました。
けれども私の願いは、私の意見を押し付けることではなく、皆さん自身に自分で考えていただくことです。改憲、護憲、いずれの意見を持つにせよ、そうして初めて、憲法は私たちのかけがえのない財産になると思うからです。
2005年5月 「伊藤塾」塾長 伊藤真